少年カメラ・クラブ

子供心を失わない大人であり続けたいと思います。

La Tour展

2005-03-15 22:30:11 | その他
上野の展来会に行った。レンブラントを思わせる光と影を効果的に使った絵が多くあった。

絵は勿論カラーであるが、モノクロ写真を彷彿とさせる。ラトゥ-ルの絵の奥の深さは、ハイライトの部分ではない。シャドウのほとんど見えない暗い部分にわずかに残るトーンの変化こそが、この作品群に深い味わいを生み出しているに違いない。

対照的に模倣作品がやや平板に見える理由も、その辺に理由があるような気がする。

作品の中で光源(ろうそく)を手でさえぎって見えなくしている絵がいくつかあった。これは多分、ろうそくの明るさを表現すると絵で表現できるトーンの幅の限界を超えてしまうため、結局シャドウ部分がつぶれてしまうためではないかと思う。いくつかのろうそくが写った絵もあったが、それでは逆にシャドウのトーンは残されたままになっていたので、ろうそくの光のトーンを十分に表現できなくなってしまっていた。その結果ろうそくの炎のインパクトが弱い作品になっていたと思う。

ラトゥ-ルの絵は絶えず表現できるトーンの幅を最大限に描くことを念頭においていたのではないだろうか。モノクロ写真におけるゾーンシステムとも重なるところがあると思う。とすれば彼の絵ではどのトーンを中間(ゾーン5)においたのだろうか。いや、多分彼の絵ではもっとシャドウに近いところをリファレンスにおいて絵に明るさを落としていったのだと思う。彼の絵のポイントはとにかくシャドウなのだから。

ラトゥ-ル最晩年の絵というのがあった。その絵には既に最大限のトーンのダイナミックレンジが生かされてはいなかった。滑らかな諧調ではあるが力強さは既にないその絵は、生涯光と影を追い求めたこの画家の最後にたどり着いたところだったのだろうか。