あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

マジックハンド 再び

2010-09-03 | 
忙しい8月が終わった。
その間、体をこき使って働いたので腰が痛くなった。疲れも溜まっていたのだろう。
スキーブーツを履くのも一苦労である。
以前スキーパトロールをやっていた時に腰を痛めてしまい、疲れが溜まった時にはそれがぶり返すが、今回は普段痛いのと逆側だった。骨ではなく筋を痛めたというような感じである。
こんな時はマジックハンドのオノさんの出番だ。
ちょうどこの頃、オノさんから『近いうちに飲みたいですねえ』というメッセージが入っていた。
忙しい中、スケジュールを調整してもらい予約が取れた。
オノさんの所へ行く時は、ボクはお茶や水をガブガブ飲んでいく。
マッサージの後のおしっこが気持ち良いのだ。
体の老廃物が全部流れ出るような、そんなおしっこができる。
この日もお茶をガブ飲みして、いざ行かん。
家から車で10分位の所にクリニックはある。
ドアをノックすると、いつもと変わらぬ笑顔でオノさんは出迎えてくれた。

近況報告や世間話をしながら、ボクは施術用の服に着替える。
「ヒジリさん、この前紹介してくれたおばちゃん、喜んでくれたみたいだね」
先日ブロークンリバーのクラブメンバーのマリリンを紹介したのだ。
彼女は膝が悪くてフィジオに行ったのだが良くならなくてオノさんの所に来た。
「ああ、彼女ねえ、『整体をやってもらってから、寝返りがうてるようになった』って言って大喜びでしたよ」
「そういう話を聞くとうれしいねえ」
施術用の台にうつぶせになり、先ずは温める。
「オノさん、今回は普段と逆の方がいたくなりましてねえ」
「どれどれ、あ、ホントだ。いつもは右だもんね」
そしてギュッと押す。その瞬間ポキッと音がして何かが入った。
「ホラ、もう入っちゃった。ここがずれていたんだね」
そして上半身のマッサージへ。
相変わらず痛い。
「あのう、オノさん、いつもより痛いような気がするんですけど・・・」
「うん、腰のゆがみが肩の方へもきているからね。このラインだ」
左の腰から右の肩へのラインをなぞる。
「だからここなんか痛いでしょ」
ギュッ
「いてててて~」
「さらにここ」
ギュッ
「あいたたたた~」
「ほら角度を変えると痛みも違うでしょ?」
グリグリ
「違う、違う、いててて、オノさん、分かったから。参った、参った」
絞め技をかけられているプロレスラーのようだ。
力を抜く。
「はあああ~」
そして恐ろしい事を言う。
「こりゃ、腰の方が楽しみだ」

オノさんの施術は全身マッサージである。
腰が痛いからと言って腰だけを見ない。
そこから繋がっている筋などを全て見る。
腰痛から来ている肩のこりなどももみほぐしてくれる。
これもとても痛い。
「ハイ、リンパ腺押さえるよ~、痛いよ」
ギュウ
「いたたたた」
「1,2,3 ハイこれで良し。こうやって短い間で悪い物が全部流れるんだから。このあとのおしっこが気持ちいいぞ」
そしてお楽しみの腰へ。
グリグリと揉む。
「うわ~、いてててて」
「あ~あ、ここにあるね。これだ。」
ゴリゴリ
「あたたたた」
やられている自分もそれだと分かるしこりだ。情け容赦なくオノさんは揉む。
「今日はキッチリ治すからね。逃がさないよ」
逃げたくても逃げれないでしょ、と心で思っても口にだす余裕はない。
口から出る言葉は「痛ててて」とか「あひぃ」とか「ううぅ」とかそんなのばっかだ。
オノさんは右に左に移動をしながらやる。
1回目にあれだけ痛かった腰のしこりも、場所を移しながら2回目、3回目となるとウソのように消えてしまう。
やはりマジックハンドだ。

ほっとするのも束の間、再び痛いツボをオノさんは押す。
「あいたたた、つる、つる、足がつりそう」
「そう、ここはねえ、足がつるツボなんだよ」
ギュッ、そして力を抜く。
「はあああああ~」
それにしてもオノさんは楽しそうに施術をする。
ボクが痛がるのを喜んでやってる。
絶対にSだ。
それに対してこっちは痛いのを求めてくるのだからMなんだろう。
オノさんは施術の間、喋りっぱなしである。その話がなかなか面白い。
「うん、こうやって笑いをとるでしょ。人間は笑うと力が抜けるのよ。その時にこう」
ギュウ
「あはは、いたたたた」
アメとムチ、天国から地獄である。
「一度ね、ずーっと黙ってやったことがあるんだけど、怖かったみたいねえ。」
そりゃこれだけ痛いことを黙々とやれば怖いでしょうに、そんな減らず口も今は出ない。
今日はよっぽど疲れが溜まっていたのか、それともオノさん流のサービスなのか、いつもより痛いような気がする。
サービスだとしたら、喜んで良いのかどうか複雑な心境だ。
もうこのころになると顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。体は力が入らなくてぐにゃぐにゃ。
そんな状態で場所を移し整体。
ボキボキ、グキグキ、と訳分からないうちにやられ、その後電気をかける。
これもなかなか気持ち良い。
その後はマッサージ椅子で終了。

服を着替えてトイレへ直行。このおしっこがまた気持ちがよい。
溜まっていた悪い物が全部流れるような感じで、腹の方から肩まで軽くなる。これだからやめられない。
今日はその後でビールだ。
オノさんもその後の予定はないので二人でカンパイ。
個人的な話も聞いてもらい、ボクは心身ともに癒された。
人間誰しも痛いことは好きではない。何故なら痛みとは人間が持つネガティブな感情だからだ。
だが体の調子を良くするために、痛いのを承知で人はオノさんの所へやってくる。
マイナス無しのプラスはありえない。一時の痛みは大きな喜びを生む。
そんなボクは、甘くない、とても硬派なマジックハンドが病みつきになりつつある。
コメント (2)
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