あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

帰郷

2019-05-16 | 日記
急遽、日本に帰ることに決めた。
何かあったのか?と思う人も多いだろうが、単に里帰りである。
親父は常に「オレが死んでも帰ってくるな。生きているうちに顔を見せに来い。」と言っていた。
もっともな話である。
ならば生きているうちに会いに行こう、と思いついて前回行ってからすでに4年が経った。
「たぶんこれが今生の別れになるだろうから、ポックリ死んでくれ」と別れてから4年。
これがなかなかくたばらない。
憎まれっ子 世にはばかる、を地でゆく親父だ。
たまに電話をかけてもすぐに「おい、今、揚げ物やってるから切るぞ。」プツンと一方的に切られてしまう。
遠くにいる息子からの電話よりも、目の前の揚げ物の方が大切なのである。
去年も今年も娘が一人で日本へ行き、父親そして兄家族に会った。
息子が来なくても孫が来たほうがいいだろう、などと思っていたが気が変わった。

最近読んだ本で、主人公が実家に15年も帰らず父が死んでから帰り、父の話を周りからいろいろ聞く、という話だった。
そうだよな、たまには帰ろうかな。今年は忙しく働いて多少蓄えもできたし。
5月のゴールデンウィークで夏の仕事が終わり、6月末に冬の仕事が始まるまで、ほとんど仕事がない。
これは僕に限ったことではなく、NZで旅行業に携わるもの全て同じである。
なのでこの時期に一時帰国する人は多い。
今年は6月の頭に仕事を頼まれていたので、帰るとすればその前か後。
6月に入れば梅雨で暑そうだし5月にしようか、などと考えていたらニュージーランド航空で安いチケットが出た。
こういうのもタイミングだろう。
ほとんど衝動買いのようにチケットを取ってしまった。
今さらの話だが、昔は旅行代理店に出向くか、電話でやり取りをして航空券を取ったものだったなあ。便利になって何よりだろうけど、不便だったあの頃が懐かしくもある。
こうやって簡単にチケットが取れる世の中になり、世界は小さくなったのだが、故郷への道が一番遠い。
ふるさとは遠きにありて思ふもの、そしてかなしくうたふもの、なのだろうか。

5月頭にクライストチャーチでツアーの仕事が終わったので車を一度クィーンズタウンへ戻さねばならない。
そして夏の棲家の片付けなどをしてクライストチャーチへ戻ってきて、一段落してから日本か。
日本から5月終わりに帰ってきて6月頭の仕事をして、6月一杯かけてゆっくり冬の準備などすればいいな。
秋から冬にかけてはそんな具合かな、と思って日本行きのチケットを取ったのだ。
その直後に酒蔵の杜氏デイビッドから連絡が来た。
「そっちの冬が始まるまででいいから働いてくれないか?」」
ううむ、そう来たか、運命の神様よ、やるのう。
薄々、打診されていたが、前回に蔵で会った時にその話が出なかったので、僕は勝手に無い物だと思っていた。
さらにその直前には、7月頭に始まるスキーツアーのスケジュールが送られてきていた。
オハウというスキー場で1週間泊り込み、オーストラリアの高校生のスキー旅行の仕事だ。
6月に酒蔵で仕事となると、クライストチャーチの家の事が何もできないでそのまま冬シーズンに突入することになる。
正直な話、非常にあわただしくなるのだ。
このタイミングでこれかあ。
嫌ならやめればいいだけの話である。ノーと言える選択肢もある。
でもこれはこれで面白い。
こういう流れの時は、身の周りの物、全てがそれに合わせて動いていく。
目の前でバチバチとテトリスが組み合わさり予定が埋まっていく感覚である。
なにより直感がゴーサインを出している。
求められる所で働くのは嬉しいものだし、自分がやるべき事という感覚がある。
アロータウンの家は6月の間、空き家なので僕が入ればちょうどよいと言う。
それにこうやって杜氏に恩を売っておけば、一般には売りに出していない旨い生原酒をもっと飲ませてくれるかもしれない。
ただしせっかく帰ってきたのに、また家を空けるというのでは家族に負担がかかる。
女房殿に話をすると、二つ返事でOKが出た。
亭主元気で留守がいいと思っているのか、遠洋漁業の漁師とでも思っているのか、とにもかくにも出来たカミさんだ。
女房と漬物は古い方がいいと昔の人も言っている。
こうやって白紙だった予定が2ヶ月先までパタパタと決まった。

前回、日本に帰った時にはJRパスを使い日本中を飛び回った。
自分で言うのもなんだがこう見えても人気者で、僕に会いたいという人が数多くいるのだ。
できるだけ多くの人に会うために飛び回り、それはそれで楽しかった。
だが今回は期間限定、正味8日間の滞在で、あちこち行かずに地元静岡で大人しくしているつもりである。
会える人も限られてしまうが、何より主な目的は父親に会いに行く為。
でも会っても会話はいつもと同じで
「ポックリ死ねよ」
「バカヤロー、オレだってそうしたいわ」
というようなものだろうな。
「オレが死んでも葬式になんか帰ってくるな」
と常に言われて十何年にもなるので今回は言ってやろうかな。
「ほら、今だったらオレが帰ってきているからアンタの葬式に出れますよ。今が一生に一度のチャンスですよー。さあ元気よく三途の川を渡ってくださーい」
親父はどんな顔をするのだろう。



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4 コメント

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Unknown (おおや)
2019-05-17 10:56:00
聖さん、わかりました。日本滞在楽しんで下さい。
いつNZに行かれるか…。
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Unknown ()
2019-05-16 17:12:45
おおやさん

今回はちょっと難しいかも。
ご家族でNZに遊びに来てください。
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Unknown (おおや)
2019-05-16 09:44:34
忙しいと思いますので、無理はなさらないでください。
返信する
Unknown (おおや)
2019-05-16 09:00:25
聖さん、静岡まで行けば会えますか。
返信する

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