長年国家公務員の親父の妻だった母親は、殆ど外で働くこともなく専業主婦として過ごしましたが、蓄財に関してはずば抜けて賢い人で、利回りの高い定期預金を探しては、せっせと使わない小金を注ぎ込んで利子を稼いでいました。
私は両親と同居していた間は、働いていた間も含めずっと母親に自分の通帳を任せていたのですが、結婚をする時に初めて自分の預金通帳を母親から渡され、その通帳に記載された利子の金額に驚いたものでした。
何故ならば、その頃の普通乗用車が1台買えるほどの金額だったからです。(利子だけで!)
後にも先にも、この時ほど母親の有難さを感じたことはありませんでした。
その母親が残した貯金や保険を始末するために、今日は親父と一緒に動いていた訳ですが、今日は生命保険の手続きを済ますことが出来ました。
受け取る保険金の額はそう大したものではないようでしたが、受取人は全て父親なので預金の分と併せて親父の口座に移すとかなりの金額になるとのことでした。(保険窓口担当者の見解です)
もちろん親父はいつかその金をどうするか決めなくてはならないのですが、保険の窓口担当者は、そこがチャンスとばかりに新商品を売り込み始めました。
『かんぽ生命 新定期年金保険』
確かに妻のことが終われば、次は自分の番だと言う思いが親父にはあるでしょう。
まっとうな親であれば、自分が使い切れないものを自分の納得のいく形で子供たちに残してやりたいと思う気持ちは、誰にでもあると思うのです。
保険の窓口担当者としては、その気持ちを汲んでの提案だったに違いないのですが、もちろん今の私の立場でそれをどうこう言えるものではないので、私は心の中でこうつぶやきながら窓口担当者の顔を眺めていました。
『越後屋、お主も悪よのぅ~』