安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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今朝の首都圏JR大混乱

2007-06-22 21:17:20 | 鉄道・公共交通/安全問題
今日は、JRの株主総会を狙い撃ちするかのように首都圏でJR大停電が起き、万単位の人が線路上を歩かされる大混乱があった。
報道された情報を総合して、私は今のところ「エアセクション区間におけるパンオーバー事故」と考えている。

実は、架線方式で電化されている鉄道(地上鉄道のほとんどは架線方式)では、10km、20kmといった長い区間を1本の電線で通すようなやり方はとられていない。考えてみれば当然で、車両側のパンタグラフと常に一定の間隔で接触しなければならないのだから、鉄道の電線は常にまっすぐピンと張った状態でなければならない。電柱と電柱の間では電線がある程度垂れ下がっていても許される電力会社の電力線とは違うわけだ。

このため、鉄道の電線はいつでもピンと張った状態になるように、終端地点に重さ数十kgの重りがつけられているわけだが、一方で、電線をピンと張った状態に維持しようと思えば、長い電線になるほど重りの重量を増やす必要が出てくる。このことは、長い電線ほど強い力で引っ張られることになり、それだけ切断の危険が高くなることを意味する。輪ゴムを強く引っ張って伸ばせば伸ばすほど、弱い衝撃でも切れてしまうのと同じである。

こうしたことから、一般の電力線が短く区切った電線を電柱で連結しているのと同じように、鉄道でも短く区切った電線を連結する手法が採られるわけだが、電力会社の電力線と鉄道の電線が決定的に異なる点は、鉄道では2本のレールの間に電柱を立てるわけにはいかないことだ。さらに前述した通り、電線をピンと張った状態に維持するため、両端区間に重りを設ける必要もある。

そこで、鉄道の電線の接続区間では、電線を線路外から線路内に引き込む一方、別の電線を線路内から線路外へ引き出すという形を取ることになるが、結果としてこの接続区間では2本の電線が重複することになる(この区間を「エアセクション」という)。

これを文章だけで表現するのは不可能なので、この原理をわかりやすく図解で説明しているサイトをご紹介する。こちらをご覧いただくと、この複雑な原理が理解しやすくなると思う。
http://deadsection.image.coocan.jp/dead_sec/dead_sec.htm

このページの「2.「ふつうの」セクションと「デッド」セクション」の項で一番初めに出てくる図が、架線の重複の原理をわかりやすく表している。

ところで、このエアセクション区間では、当然ながら両方の電線に電流が流れている。この接続区間の目的が、電車への電力供給を途絶えさせないようにしながら、電線だけを物理的に切り替えることを目的としているからだ。
エアセクション区間にパンタグラフが位置した状態で電車が停車すると、2本の電線がパンタグラフによって短絡され、2本の電線が導通する事態が起こる。この導通状態を「パンオーバー」と呼ぶ。

今回、事故が起きた大宮~さいたま新都心間は直流1500V区間だが、パンオーバーが起こると限界値をはるかに超える過大電流が両方の架線に流れるため、その過電流で電線が溶断してしまう。今回の大停電事故は、このような経過をたどって起きたと考えられる。

なぜ、わざわざエアセクション区間を選ぶように電車が停車したのかは今後の究明を待たねばならないが、パンオーバー発生の恐れがあるエアセクション区間には標識が設置されているのが普通であり、運転士がこの標識を見落とした可能性がある。
今朝は雨が降っており、車輪のスリップを心配して運転士がいつもより手前でブレーキを操作したのかもしれない。

ただ、一般マスコミの中には「架線の定期検査では異常がなかった」などと的外れな報道をしているところもある。(例えばここ

パンオーバーは電線同士の短絡によって突然起きる現象なので、定期検査で異常があったかどうかはほぼ無関係と考えてよい。一般家庭で、電気の使いすぎでブレーカーが落ちたからといって、通常「設備がおかしい」とは考えないのと同じである。

ただ、こんな事故がよりによって株主総会の当日、それも開始直前に起きるとは、JR東日本は運にも完全に見放された感じがする。

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