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会話力アップ

2020-12-13 | わかりやすい表現
会話力アップ

●会話にも決まりがある
 「たかが会話、されど会話」である。
グライスという言語学者が、かつて会話が成立するための公準を提案したことがあります。
①適度の情報量
 会話では、必要とされている情報よりも、多すぎても少なすぎても、よくない。
②真実性
 ことわりのない限り、あるいは自明でない限り(自明なら嘘は一つの修辞表現)嘘を言わない。
③一貫性
 会話の流れに関連したことを言う。それをそれる時は、「話は違うけれど、」といったヘッジ(枕言葉)を入れる。
④明瞭性
 簡潔にはっきりと話す。

 この公準、至極当たり前ですが、よくよく自分の会話や周りの会話を観察すると、公準違反があることに気がつきます。
自分の知っていることを長々と話したり、確かめようのないうわさを話したり、平気で話題を変えてしまったり、専門用語をも造作に使ったりといった会話です。
会話をしてどっと疲れたりストレスを感じるのは、こうした公準違反に原因があることが多いはずです。

●言葉のキャッチボールをする

 誰と会話するにしろ、会話は、言葉のキャッチボールというくらい、思いや感情が相手との間で頻繁にいったりきたりします。
 ところが、時にはピッチャーが投げキャッチャーがとる関係になってしまう会話もあります。
 電車で遭遇した光景。
3人の中年女性が賑やかに会話しているのですが、真ん中の女性がひたすらしゃべり、左隣の女性がもっぱら聞き役。右隣の女性は我関せず。これが下車するまで30分も続いていました。こうなると会話を装った演説ですね。
 会話を分析するときの一つの指標に、ターンテーキング(turn taking)というのがあります。
 攻守ところを変える会話のキャッチボールが何回行われたかを数えるのです。それが、会話の質、さらには会話参加者の相互関係作りに大事ということです。

●会話には癒し機能がある
ただ、会話には、話すことでうっぷんがはらせる、という癒しの機能もありますから、お互いさまで、「今日は私の話を聞いて」ということで会話をすることもありだそうです。会話(おしゃべり)好きの女性から聞いたことがあります。
  「ものを言わぬは腹ふくれる業なり」です。でも、そのお返しは必要です。次にあなたが聞き役を引き受けることです。大きな流れの中でで、公平なターンテイキングにするのです。
カウンセリングではここに注目して、クライアントにもっぱら話させて、カウンセラーはもっぱら聞き役という会話場面をあえて作ることもあります。
保健室では、子どもからの一方的な訴えをひたすら受け止めるような会話が多くなります。ストレスが溜まりますが、職務としてたんたんとこなすことになります。

●会話の知的機能を活用する
 会話にはさらに大事な機能があります。それは、情報を収集したり、相手に情報を提供したりすることです。
 今はコンピュータの検索機能やメールが、かつては会話でしていたことのかなりの部分を代替するようにはなってきていますが、それでも、対面会話から得られる「生の」情報には捨てがたいメリットがあります。
 メリットその1は、会話では、情報のその人なりの評価、それも明示的な評価だけでなく、その情報を言ったり聴いたりした時の表情や声の調子などの言外の評価情報が生のまま得られることです。
 メリットその2は、会話での知的触発です。会話の最中に、突然、何かを思いついたという経験はなかったでしょうか。あるいは、会話内容を後で思い出して、「そうだ! そう言えば」といったことはなかったであしょうか。相手のちょっとした言動がそうしたことのきっかけになっているのです。

●表情と視線は、会話の潤滑油
 対面会話では、言葉以外の情報も否応なしに相手に伝わります。なかでも、表情・ジェスチャーと視線の役割は重要です。相手の話に同意、不同意も表情やジェスチャー、時には視線で即座にフィードバックできます。
 にこやかで応答的な表情は、相手の話を促すし、不機嫌な表情は、会話を抑制します。
さらに また視線は、主に会話でのターンテーキングの調整をしていることが知られています。自分が話す時には相手から視線を避け、終える時は次はあなたの番とばかりに相手を見るのです。
 表情・ジェスチャーと視線はいずれも、あまり意識的にコントロールされていないのが特徴です。それだけに、本音が出ます。それだけに、意識的なコントロールのもとにある言語情報との整合性が問われることになります。
これに関連して、「二重拘束」というおもしろい概念が哲学者・ベイトソンによって提案されていますので紹介しておきます。
 たとえば、保健室登校をしてきた子どもに、本当は教室にいってほしい気持ちを押し隠して元気で「おはよう」の挨拶を交わすような光景を想像してみてください。子どもは、あなたの2重の矛盾した気持ちを瞬時に読み取り、戸惑います。本音と建前のギャップにとまどうことといってもよいかと思います。
 表情・ジェスチャー、そして視線がこんな大切な役割を果たしていることをまずは知ってください。その上で、それなりの配慮ができるようになってください。項をあらためて、考えてみます。

●会話では、知的共感性が大事
 1章で、共感的理解の話をしましたが、それはもっぱら感情的共感についてでした。共感には、それに加えて、知的共感性も会話も含めたコミュニケーションでは大事です。
 知的共感性とは、以下のようなものです。
・相手の立場にたって物事を考えることができる
・反対意見も尊重する
・どんな問題でも対立する意見や考えがあることを承知している。
・批判や悪感情を持つ前に、相手の立場を考えられる
これらは、桜井茂男氏が作成した共感性をはかるための項目から抜粋したものです。
知的共感性とは、このように、相手の頭の働きや知識の思いをはせられることです。
会話だと相手が目の前にいますから、この知的共感性が直接試されることになります。



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