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日本語学習への提言

2007-06-10 | 認知心理学
03/1/17海保 東京外国語大・日本語シンポ 提案 
       短期集中学習を効果的にするための
       認知心理学からの5つの提言
   
        海保博之(筑波大学心理学系)

提言の根拠と内容*****************************************
 1982年にUCLAに在外研究で10か月滞在した。英会話にいささかの自信を持っての在外研究だったが、結局は、英語恐怖症で終ってしまった。そこでの個人的な体験と、身辺に増えてきている外国人留学生の日本語運用の観察とを認知心理学の知見で脚色して、短期集中学習に効果的と思われる5つの提言をしてみたい。
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●提言1「日本語運用の貧弱さに起因する自己嫌悪、ストレスに配慮する」
 思考と言語表現のギャプは、母語でもあるが、L2による言語表現では、そのギャップが激しい。
 しかも、L2で会話しているときには、その習熟度に比例して思考力の低下が起こる、外国語副作用現象も知られている(高野陽太郎)。
 思いを伝えられないことに起因する自己嫌悪、ストレスは、母語で高度な思考を展開してきた知的エリートほど強い。
 「思考=言語」ではないことを理解していることを伝え、時折は、高度な思考を母語で展開する機会を提供する。
pptあり

●提言2「反復練習を良質なものに」
 反復練習は、長期記憶への良質な知識の貯蔵のために行なわれる。
○初期学習における反復練習
 日本語の基本的コード化システムを習得するために行なわれる。かな文字、基本漢字、拍などは、「理屈抜きの」反復練習をすることになる。飽き(心的飽和)がこないような配慮、たとえば、10分程度の短時間で頻度を多くして反復する分散法や、グループ一斉学習などの工夫が必要である。
○中期から後期における反復練習
 コード化システムの精緻化のために行なわれる。定評のある長文の暗記や書写、あるいは定評ある朗読の模倣などの反復練習である。これによって、
 ・コードの精密化 例 類義語間の区別や用語の定義ができる
 ・コードのカテゴリー化 例 用語の上位・下位概念がわかる
 ・コードの連想的豊潤化 例 一つの用語からいろいろの用語が連想できる
 ここでの反復は、60分程度の長時間の集中法が効果的である。さらに、塚なれた概説書や辞書や文法書など、精緻化支援のための材料活用の用意が必要である。

●提言3「コード化システムの運用を
手続的知識へ
検索系

模倣
類義語間の区別のような
初期コードの反復  ベーシック・コードと
命題コード
スキーマコード
状況コード
連想コードへの誘導
●提言2「類推思考を絶つ」
 
自分の国では、
自分の国の言葉では「休憩

●提言*「ワーキングメモリーを鍛える」
・コード化システムを豊かに
   チャンクを大きくする
・処理効率を高める
  容量を大きく 個人差
  単位時間
  注意集中度を高める
 
●提言*「理解より運用に重点を」
コミュニケーションすること自体に価値があるように思わせる
運用することで学ぶ


●提言2「文化依存学習への誘導
●提言2「有能感
●提言*「学習の認知的カウンセリングをする」
●提言*「状況ベースと理論ベースとの往復を」

●提案1

●提案2 文法はほどほどに
 言語を理解するには、文法は必要。
 しかし、言語を使えるようにするには、文法は不要。

  使える=手続的知識--->

れは、記憶するには同じものを反復するだけが効果的というわけではなく、片方だけ反復するだけでも効果があるということです。A=Bを覚えた後、B=CとA=Dを覚えると、実はA=Bを反復したことにもなるのです。
 関連のあるものを少しずつ連鎖するように、網の目のように範囲を広げると効率的だとわかります。
 記憶するとは、ジグソーパズルを組み立てるようなものです。既に組みあがった記憶のピースの隣以外に置くことは難しいのです。ただし、最初のピースは何もないところから置くしかありません。これは算数の九九や英語の発音などで、スタートには丸暗記が必要ということです。
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m5-8.エピソード記憶で一発暗記

 エピソード記憶は、一回で覚えてしまうことができます。ですから、これほど速く学習できる記憶はありません。学習内容をエピソード記憶にすることができれば効率的です。
 まず、エピソード記憶は思い出の記憶であることです。すなわち、過去の思い出や経験を語ることですが、これはさきほどの日記の方法がよいでしょう。
 エピソード記憶は、印象度の強さに比例します。すなわち、それは感情が含まれます。感情は神経成長因子を分泌させ、記憶を強化するのです。
 感情とは、行動への欲求です。行動しなくてはならないと感じると感情が生まれます。感情の起こらない、退屈なこと──行動しなくてよいことが覚えられないのは、人間が動物である以上当然のことです。
 ですから、本を読むときは、芝居の台本を覚える俳優のような気分になるのがよいということです。著者や登場人物の気持ちになれれば効果的なのです。
 また、感情を込める方法として「驚き」を使う方法があります。驚きは、自分のもっていた予測が訂正されることにより生まれます(詳しくは3章.驚きを参照)。覚えようとすることをクイズ形式にしましょう。解答を考えて間違うと、予測の訂正ですから驚きが生まれ、強く記憶されるのです。もちろん、正解の場合には成功の「喜び」もあります。
 丸暗記では予測がないため驚きとならず、感情が生まれないのです。
 またこのとき、二人一組になって交互に行うのがよいでしょう。喜びは他者へのアピール(3章.喜びを参照)なので、一人では困難なのです。
 エピソード記憶はらせんのようなつながりの記憶です。筋の通った展開をもち、飛躍せずなだらかにつながっていることが必要です。
 なだらかにつながっているというのは、既に完成された記憶を利用するということです。今までの人生で記憶した変化パターンにのっとったものは、側頭葉に記憶のループが完成しています。新しく何かを記憶する場合、それが過去の変換パターンに則したものなら、側頭葉内部の記憶の小ループも反応します。AからB、BからAへ到達する信号が、海馬を経由するものと、記憶の小ループを経由するものと二つになるため、信号量が増加するのです。そして、その信号が神経成長因子を分泌させるので、強く記憶されるということです。
 それには、なぜそうなのかが納得できるようにすることです。納得でき、理解できると、忘れることはなくなるのです。言葉なら語源や構造を知るのがよいということです。
 語源がわからない場合は、語源を捏造するという方法があります。これが、数字を覚えるときに用いられる語呂合わせなのです。
 たとえば、いい国つくろう鎌倉幕府、一一九二年などは有名です。なぜ、一一九二なのか?いい国作ろうだから一一九二なのだ──という偽の語源を作っているのです。
 世の中で知られている記憶術も原理は同じです。語呂合わせ、身近な場所や体など生活による反復、印象度の強化によるものなのです。また、外国に住むとよいのも、これらの条件がすべてそろうためなのです。

:::::::::::::::::::::::::::::命題ユニットの語彙学習ーーー
「本」ではなく「本を読む」」
「私」ではなく「私は海保です」
・命題は意味の最小単位

:::::::::::::::::::::::::::::言葉の学習は、意味学習
文法は不要?

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