心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

笑う

2020-07-19 | ポジティブ心理学
笑わない高齢者 介護必要になるリスク1.4倍に 名古屋大など
2020年7月16日 5時41分(NHKネットニュースより)

@@
ポジティブマインド
スポーツと健康,積極的な生き方の心理学
著者
海保 博之 監修
中込 四郎 著
石崎 一記 著
外山 美樹 著

ワードマップ
心理学・認知科学・臨床 > 認知
ワードマップ
2010/04/05




笑う「一日3回の爆笑で心もからだも元気」

  • 笑いってどんなもの
 笑うから元気なのか、元気だから笑うのか。いずれであるかはともかくとしてーー実は、これは、感情心理学の大問題の一つなのですがーー、笑いと心身の健康(元気)とは関係があることは間違いありません。
 ただ、「笑い」には実にさまざまなものがあります。苦笑、嘲笑、冷笑、せせら笑いなどのようにネガティブな感情の表出としての「笑い」から、笑顔、爆笑、微笑のようにポジティブな感情に伴う「笑い」まであります。さらに、照れ笑いなんてのもあります。
まさに、人間その笑う存在です。
ここでは、言うまでもなく、後者のような笑いを取り上げることになります。
 さて、その笑いってどんなものなのでしょうか。
 笑いに限りませんが、気持ちの喜怒哀楽は、顔の表情として表出します。笑いもその一つ、しかも、人に固有の表出です。
怒りなどのネガティブ感情に伴う表出は、犬猫でもあるのになぜでしょうか。(もっとも、動物愛好家なら、犬猫も笑うというかもしれせんが。)
 それは、笑いの2つ目の特徴になります。つまり、笑いは、社会生活の中で、かなり大事なメッセージを伝えているのです。
・私はあなたのことを全面的に受け入れます
・私は今ポジティブです
・あなたは私の予想を外れた行為をしています
 社会的動物である人にとっては、このように、笑いは、欠かすことのできないコミュニケーションの道具なのです。
 笑いをあえて、3部の「仲間を元気にするためのキーワード」に入れたのも、このためです。

  • どういう時に笑うのか
まずは、お互いがポジティブな感情を共有しているときに、笑います。
やや余談になりますが、大学で40年余り講義をしてきましたが、どう考えてみても、講義中に学生が笑ってくれたという思い出が一度もありません。
何度も冗談やダジャレのようなことも言ってみたこともありましたが、学生のほうは、ぽかーんとしていました。そんなことが続くため、いつからかもう、学生を笑わせるような努力をしなくなってしまったようです。
笑わせようとして努力したのに笑ってくれないときほど、ばつの悪いことはありませんから。

 それに対して、落語や漫才の寄席中継。
笑いの渦ですね。なんでそんなことがおかしいの、というところでも笑いが起こります。
 つまり、講義室とは違って、寄席では演ずる人も観客も、笑って楽しむという目的を共有しているのですね。笑わにゃー損々、というわけです。
ですから、笑いの閾値が低いのです。
 大学の講義以外にセミナーや講演などでも、笑いをとるのは、日本ではかなり難しいです。聴衆のほうが、まじめすぎるのです。お勉強するのに、笑いなんて不謹慎とさえ考えているふしがあります。

 でも、ポジティブな感情を共有しているだけでは笑いはおこりません。
 笑いを起こすのは、相手の言動が、こちらの解釈のための図式(スキーマ)とずれている必要があります。
 最近のお笑いタレントは、奇妙な動作で笑いを取るのが流行のようです。
「奇妙」に見えるのは、そんな動作は「普通は」しないからです。この「普通は」を支えるのは、あなたの頭の中にある知識のまとまり、すなわちスキーマなのです。
 スキーマからのズレがはなはだしくなると、笑いより驚きになってしまいますので、微妙なずれ具合をとるのが聴衆を笑わせるコツになります。
そのあたりのうまい下手が、お笑いタレントのタレントということになります。
 
  • 笑いの効用
繰り返しますが、
 「相手を全面的に受け入れる」
「自分がいま、ポジティブであることを伝える」
「あなたは私の予想を外れた言動をしています」
といったメッセージを相手に言わずもがなに伝えることは、笑いの一つの効用です。
 この「言わずもがな」が大事ですね。何も言わなくとも、笑いは、これだけのことをわかってもらえるメッセージなのです。
 使わない手はありません。
これ以外に、笑いは、相手の気持ちを元気にする効用もあります。
笑いだけではありませんが、笑いには、感染効果があります。ある人の笑いが回りの笑いを誘うのです。この効果は場の雰囲気を変えます。周囲を元気にしてくれます。
もうひとつ、横道にそれますが、最後に全然違った笑いの効用を2つ紹介しておきます。
一つは、笑いの病気の防止と治療効果です。
笑う人のほうが病気にかからない、病気になっても回復が早いということを示すデータがあれこれ報告されているのです。筑波大学の名誉教授で遺伝学の研究で著名な村上和雄先生によると、笑いは、病気の発症や治療にかかわる遺伝子のオンオフに関係しているらしいのです。
もう一つは、同僚の市村教授から仕込んだ話です。笑いの心理的効果です。引用しておきます。
「野球のピッチングの練習を、笑顔でやるのと苦しそうな顔でやるのとでは、笑顔のほうが球速を持続させられる、というスポーツ心理学の実験研究もある。心理学の有名な実験に、氷水の中に手を入れておく時間を、笑顔の人と苦しい顔の人が競争すると、笑顔の人が勝つ確率が高い、というものもある。」
笑いは、このように、心身の元気作りに関係が深いのです。
 
  • 効果的に笑う、笑わせる
さて、では、効果的に笑ったり、笑わせたりするのは、どんなことに心がけたらよいの
でしょうか。
 いずれの場合でも、気持ちがポジティブでないとどうにもなりませんね。無理な作り笑いになってしまいますから。
 その上でまず、自分から効果的に笑うほうから。
 先ほど、講義や講演では、学生諸君や聴衆がまじめで笑ってくれないという話をしました。まじめなのは良いのですが、でも、相手が笑わせようとしているときには、場の雰囲気がありますから大声で笑う必要はありませんが、せめて顔の緊張をほぐして微笑くらいはするように心がけることです。
確かに、お笑いタレントと違って、笑いのきっかけになる思考のズレは、もっぱら知識のズレですので、きちんと話を聞いていないと笑うタイミングがとれません。それだけに、笑うということは、あなたの話をきちんと聞いている、話が私に伝わっているというメッセージを相手に送り返すことになります。
もう一つは、かなり強引な笑いになりますが、ともかく笑う、もっと言うと爆笑することです。さらに言うなら、気持ちに関係なく笑ってしまうことです。
冒頭で、「笑うから元気なのか、元気だから笑うのか」は、感情心理学の大問題と言いました。それは、
笑う(身体の末梢反応)――>元気(ポジティブ感情)
という因果を想定するのか、あるいはこの逆なのかということなのですが、ジェームズ・ランゲ説として古くからあったのが、「笑うから元気」という因果関係なのです。
それが最近、少し装いを新たに再登場してきたのです。ちょっとだけ説明します。
笑うーー>「自分は、なぜ笑うのだろう、と推論する」ーー>おもしろいからだ
「身体反応」と「感情」との間に、身体反応を推論する過程が入って、その解釈に従って感情が発生する、というのです。「笑っているから、自分はおもしろいと思っているのだ」というわけです。
人は何にでも理屈をつけたがる存在であることを考慮した仮説です。
 決着はついていませんが、でも、ともかく笑ってみる。そうすれば、元気になるのですから、試してみる価値はありますね。
 
次は相手を効果的に笑わせるコツです。
 お笑いタレントの真似をして、「冗談、ユーモアを言う」「ぼけたり」「突っ込んでみたり」「ダジャレを言ったり」「からかってみたり」は、場面によってはあってもよいかもしれませんが、普段は、そんなハイテンションは不要です。というより、疲れてしましますね。
 相手を効果的に笑わせるには、結局はここでも、あなたが笑えば良いのです。あなたの元気を見せればいいのです。
あまりにも簡単なことですが、これがすべてです。(笑)というのは、嘘です。3部で取り上げるキーワードの随所で、周りを笑わせるための具体的なコツが披露されています。

 




最新の画像もっと見る

コメントを投稿