いよいよ‘お盆’が近づいてきました。
京都では16日の「五山の送り火」までお盆行事が目白押しです。
冥界から現世へお帰り下さる「ご先祖さま」にも‘おもてなし’の
心で接する京都の人の伝統的な宗教行事の始まりは「六道まいり」
で有名な「六道珍皇寺」の 盂蘭盆会 から。
平安時代、弘法大師の師匠にあたる慶俊僧都(きょうしゅんそうず)が開いた古刹・珍皇寺。
門前の「六道の辻」と呼ばれる四つ辻が現世と冥界との境目に当る場所とされ
京都では珍皇寺のことを「六道さん」と呼んで親しんでいる寺。
ここを入口から東山へ登った所が、吉田兼好の「徒然草」に出て来る鳥辺野の葬祭墓地
で、遠い昔は死人の殆どがこの地に運ばれ捨てられていたので「六道の辻」
と呼ばれたそうです。
「六道」とは「地獄・餓鬼・鬼畜・修羅・人間・天上」
という6種類の冥界の階級を指す言葉。
お盆に帰ってくる霊を「せめて、六道の辻までお迎えにいこう」
ということで始まった行事といわれています。
珍皇寺の境内にあるのが「鐘楼」は、鐘の音は冥土まで届き、死者の霊が
この世に呼び寄せられるという。
毎年盂蘭盆(うらぼん)の7~10日には精霊が宿るといわれる霊木・高野槙の穂枝を
参道で買い、本堂で故人の戒名を水塔姿に書いてもらって先祖の魂を呼び寄せる
「迎え鐘」を参拝者自身で突いて精霊を呼び寄せるのです。
精霊が宿るといわれる霊木・高野槙の穂枝を参道で買い、本堂で故人の戒名を
水塔姿に書いてもらい
鐘はお堂の中に封印され外からは見ることができませんが、お堂から垂れ出ている
撞木に繋いだ綱を引くことで鐘を鳴らします。
他の寺の様に‘叩く’というのではなく、綱を引くことで
鐘がなるという、まるで神社の鈴のようなつくりが面白いです。
鐘の音が冥土まで届くという珍皇寺には、冥土への入口がある
と信じられており、実際、ここから冥土と現世を往復していたと
いわれる人物が、参議を務めていた「小野篁(たかむら)」です。
篁は奇才と呼ばれる特殊な優秀さがあった人で、昼は朝廷の仕事
をして夜は冥界でえん魔大王の片腕官吏として働いたといわれる
「京都魔界列伝」には必ず登場する謎深い人物でもあります。
篁は夜になると境内にある井戸から冥界へ入っていたといわれ、
今もその伝説の井戸は残っています。
ちなみに出口は嵯峨の釈迦堂横の嵯峨薬師寺にあります。
珍皇寺境内にある「篁堂」という小堂には篁の像の隣にえん魔さまの像も安置してあります。
六道珍皇寺の鐘を鳴らし、ご先祖さまをお迎えする
行事で始まった京都伝統のお盆は、16日のお見送り
行事である五山の送り火まで続きます。
☆六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)
京都市東山区東大路通松原西入ル小松町595
「六道まいり」盂蘭盆会 7日(日)~10(水)
期間中は重文本尊の薬師如来像の特別開帳や寺宝の地獄絵も
公開されます。参道には露店も並び「幽霊飴」も売られます。