ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2015.6.5“残響2秒”のこだわりのホールにて~定期演奏会を聴きに、関西へ

2015-06-05 23:41:50 | 合唱
 息子が出演する演奏会を聴きに、前回から僅か3週間にして、またも新幹線に乗ることになった。
 早朝、珍しく本人からLINEで「おはよう」と連絡があった。今日のステージオーダーを教えてくれるものだった。準備やら接待やらリハーサルの為、9時集合なのだという。確か今日は2限だけ授業の筈では、と問うと「ちゃんと話をつけてある」・・・だそうだ。うーん。大丈夫か。

 実際の演奏会は夕方開演なので、金曜日だというのにいつもより長くベッドに滞在して、朝の連続テレビ小説を見、洗濯を干し終えてゆっくりと家を出た。
 あいにくお天気は下り坂だ。車窓からは殆ど雪のない青々とした富士山を拝むことは出来たけれど、いかんせん雲が厚い。
 今日のお供は湊かなえさんの「サファイア」(ハルキ文庫)。“真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、ガーネット、そして表題作サファイアという7つの宝石を巡る人間の愛と善意と希望”という7つの短編集だったが、さすがに湊さんの作品、どれ一つとして裏切られることはなく最後までノンストップで読み進み、読後はしばし脱力感に浸る。
 そして買い込んだ駅弁を愉しみ、定刻通りに京都駅に到着した。ホームは修学旅行生たちで溢れかえっている。外を歩く人たちは傘を差していて、夫ともどもすっかり薄着で来てしまったせいか、なんだかやけに肌寒い。

 今日のコンサートは通称“関混連”(関西学生混声合唱連盟)の第46回定期演奏会だ。私も大学時代に “六連”という名の東京六大学合同演奏会があって、上野文化会館の大ホールで歌ったものだったなあ、と懐かしく思い出す。6大学が各々小ステージを持ち、最後は6団合同での大合唱というプログラムの組み立ても同じだ。

 お天気も悪いので少し早目に、とJRを乗り継いでホールを目指した。到着したのはちょうど開場数分前だったが、既に行列が出来ていた。まずは席を確保してからカフェで軽食を摂りながら時間調整。ショップで、ここでしか買えない(これにめっぽう弱い)懐かしいピアノの楽譜を模したノートやクリアファイル等をゲットしてご機嫌な私である。

 コンサートホールは1,700人もの収容人数を誇り、荘厳なパイプオルガンが中央に鎮座ましましている。その舞台の上方には6つの合唱団の団旗が掲げられている。1982年の開館以来、カラヤンはじめ世界中の著名なアーティストが公演しているというステージで歌うことの出来る息子はなんと恵まれていることか。
 各団は最初の校歌に始まり、15分から20分の持ち時間で2,3曲をお披露目する。国立2大学、私立3大学の熱唱を堪能し、彼の団は6番目の最終ステージだ。今日の演目は、混声合唱とピアノのための組曲「万象」より、Ⅳ いにしえ、Ⅴ 蕃熟の大地Finale~玉名平野に寄せる想い、の2曲だ。
 この季節、1回生はまだ舞台に乗れないし、4回生は就活で大変だしということで、どの団も2,3年生だけで人数がかなり少な目に見える。親の欲目、贔屓目であるのは否めないけれど、男女比もパート比も一番バランスがとれており、女性指揮者も堂に入った棒さばきで、トリに相応しい演奏だった。何より楽しそうに表情豊かに歌っている息子は、高校時代までとは別人のように輝いて見える。その姿を客席から見られてこちらもすっかりいい気持ちになる。

 最終の6大学合同ステージは、全員集合の200人を超える大合唱。各団のユニフォームも入り乱れ、舞台所狭しと若いパワーが炸裂する感じ。
 今宵が委嘱初演だというが、作詞者が自ら客演指揮を執り、作曲者が客演ピアノを演奏。曲は若者の繊細な心の揺れ、挫折からの再生、力強い歩みという詩に音に乗せた5つの歌からなる組曲で、かなり昔に若者だった私の心にも大きく響くものがあった。 

最終曲の「歌は繋いだ手のように」[作詞:みなづきみのり]から
「(前略)
 私たちは生きている
 繰り返されるこの日々を
 いくつもの挫折を繰り返し
 たくさんの傷を抱えたままで
 たくさんの思いを呻きのように抱えたまま

 必ず陽が昇り
 必ず虹がかかるこの世界の上で

 (中略)
 
 目を合わす
 手を取る
 息を吸う
 共に歌う
 一連の所作は
 生きていることそのものだ
 さあ
 歌おう
 私たちの歌を」

 やっぱり歌うって素晴らしい。若い歌声は直球ど真ん中に響き、改めて大きな“生きるエネルギー”をもらった3時間だった。

 演奏後はレセプションに流れる息子に会うことも出来ず、LINEで「お疲れ様」とだけ連絡。たまたまロビーでアンケート回収をしていた同級生に挨拶をして、夫と二人、そぼ降る雨の中帰途についた。

コメント (2)
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