ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2020.1.7 隣は何をする人ぞ

2020-01-07 22:29:09 | 日記

 今の住まいに入居してから今年の5月で丸26年になる。四半世紀を超えたというわけだ。
 我が家は4階建て16世帯の小さな棟だが、8世帯ずつ半分に分かれており、入口が2つある。もう一つの8世帯は何軒か出入りがあったものの、私たち8世帯はこれまで不動であった。

 初夏の除草作業の時だったかそれぞれの近況報告があり、夫が「○○さん、引っ越すそうだよ」と話を聞いてきたと記憶している。そういえばお引越しはいつ頃されるのかな、と思っていたら、11月の初旬にあっという間にいなくなってしまった。
 ご主人の実家のご事情でそちらに行くことになったと漏れ伺った。

 既にご主人も退職され、3人のお子様たちも独立されて久しく姿を見なくなった。我が家と同じ夫婦2人の生活に4LDKの家は大きすぎたのかどうか。けれど、少し前にかなり本格的にリフォームされていたので、自宅を手放すということはあまり考えておられなかったのではないか。これはこちらの勝手な想像に過ぎないのだけれど。

 お隣さんではあったけれど、都会のお付き合いのご多分に漏れず、回覧板を持っていくとか(これもお互い不在ならドアノブにかけるだけだから顔を合わせることはない。)ごくたまに夫の郷里から送られた野菜のお裾分けをする以外殆ど何の交流もなかった。

 ご主人がかなりのヘビースモーカーで、家の中では吸えないのだろうか、ベランダで朝から喫煙されるため、窓を開けるたびに煙草の煙に悩まされていた。奥様は歌を専門にされていたのか、防音装置のない部屋で大きなソプラノボイスで歌われることが多かった。体調が悪くて家で寝ている時にはそれは辛く、やめてくださいと直談判するわけにもいかず。引っ越されると聞き、正直ほっとしている部分はあった。

 ある日の夕方帰宅すると、大きな引っ越し業者のトラックが2台、棟の前に来ていて、夜になっても延々と積み込みをしていた。大変だな、今日中に新居に到着出来るのかしらと思っていたところ、翌朝は新居には持っていけないと思われる大きな家具がいくつもどーんと転がっていて、びっくりしながら出勤した。さすがに粗大ごみ回収の依頼はしてあったようで、帰宅した時には跡形もなく片づけられていたのだけれど・・・。

 夫が「四半世紀お隣に住んでいても一言挨拶なんてものもしていかないんだね~」と呟いた。「確かにね~」と相槌を打った次第。
 一度で完全に片付かなかったようで、その週末もまだ片づけにいらしていたようだが、結局お顔を見ることはなかった。その後、郵便受けに「転居、手続済」とガムテープが張られていたのを目にして「ああ、もうこれで戻ってこられることはないのね。」と納得した。

 その夜は夫の方が帰宅が早く、テーブルの上に有名カフェの小さな袋が置いてあった。「これ何?頂きもの?」とちょっとワクワクしながら訊くと、夫はにやりとして「面白いよ、見てごらんよ」と言う。
 「?」はたして、封の開いた使いかけの市の指定ごみ袋が数枚入っていた。「お使いください 〇〇」と付箋のメモがついて。

 ここに住んでいるならまだ使えるが、自分たちは別の市に移動して使えなくなるし、捨ててしまうのはもったいないから、と隣の我が家に置き土産としてくださったのだろうけれど、一瞬2人で顔を見合わせた。
 普段我が家で使っているごみ袋とはサイズが違っていて使い勝手が悪いのだけれど、せっかくのご好意、捨てるわけにもいかず。なんとなく置きっぱなしになっているのである。

 年が明けてまだお隣は空き家のまま。新しいお隣さんはいついらっしゃるものやら。気になっていないといえば嘘になる我が家である。

コメント
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