営団地下鉄 インク式券売機券のいろいろ ~その5

4回にわたり営団地下鉄のスミインク式券売機券を御紹介してきましたが、もう少しお付き合いください。


前回、単能式・多能式券ともに最終形が登場したことについて御紹介いたしましたが、「最終形」と言えども「掟破り」が存在しておりました。

 

   


昭和51年6月に中野坂上駅で発行された単能式券です。

印面は他の単能式券と同一ですが、当時、試験的に中野坂上駅と恵比寿駅に自動改札機が設置され、両駅では自動改札対応の磁気券が使用されました。
当時の磁気はまだ今ほどの情報量を記録できるものではなく、茶色い磁気が塗られておりました。そのため、自動改札機で開けられた穴が日付のところにあります。

しかし、自動改札機が全駅に設備されていたわけではありませんから、当然ながら同駅に集まる着札券は裏が白い非磁気券でありましたため、単なる「入鋏機」に過ぎない自動改札となっていました。これらの自動改札機は試験的な要素があったのでしょう、やがて撤去され、一旦は有人改札に戻ってしまっていたような記憶があります。

ちなみに、自動改札対応の多能式券も存在します。

 

   


昭和52年11月に市ヶ谷駅で発行されたものです。

この券は「地下鉄線」と金額数字、「円区間」および小児運賃の行間隔が異様に狭く、下に広い空白があります。この様式は市ヶ谷駅のものだけに見られたもので、謎の空白は次のものを見れば理由が分かります。

 

   


昭和49年10月に市ヶ谷駅で発行されたものです。

小児運賃の下には「入鋏省略」の文言が入っています。確か改札不在という時間帯は無かったものと記憶しておりますが、なぜ故このような表記が付けられていたのか、今となっては不明です。

この表記は印版にそのまま刻印されておりましたが、昭和50年代には200円券のようにその部分が削ぎ落され、文字間隔が異常に狭く、その分謎のスペースのあるバランスの悪いものとなってしまっています。

市ヶ谷の券は、次の運賃改定ので印版が交換された際には通常の様式となってしまっています。


以上、5回に亘って営団地下鉄のスミインク式券売機券を御紹介して参りました。

券売機券はコレクションの対象外という方も多いかとは存じますが、このようにバラエティな様式に興味を持たれた方も多いのではないかと思います。
今は特に珍しくはない券売機券ですが、10年・15年先には全く様式が変わり、当時を懐かしむことができるものになるかもしれません。「何気ない日常が懐かしい過去になる」ということを肝に銘じてきっぷ蒐集に励むのも一つの楽しみです。


一口に営団地下鉄の券売機券と言えども、同時期にこれだけ多種多様な様式が入り乱れており、大変興味深い内容となっております。特に資料もなく、手元にある券を元に御紹介いたしておりますので、まだまだ他にも未見の様式がある可能性もあります。もし他にも例がありましたら、御教示願えると幸甚です。コメント欄でお知らせください。

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