散日拾遺

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梨の木に梨の花咲く

2021-03-28 12:05:11 | 日記
2021年3月23日(火)
 キジが撮れたと喜んで一、二の友達に知らせたら、驚いたことに埼玉在住のO君が、同じ日に荒川近くの田島ヶ原でやはりキジを見かけたという。1,000kmを隔てての co-incidence を面白がったことだが、荒川縁はともかく河野川沿いのキジについては、単純に喜んでばかりもいられない事情がある。
 この地で生まれて94歳を迎えた父が「初めて見た」というのが問題で、キジは昔からそこらに住んでいたに違いないが、今この時に人目に付く場所まで進出してきたのである。里山側の二軒の家が跡継ぎ戻らずで廃屋になり、人の生活圏が縮小した分、野生動物の行動範囲が拡大した結果であろう。
 となると怖いのがマムシやイノシシで、どちらも北隣りの家の周辺にちょいちょい出現することを、在りし日のSさんがよく話しておられたから、さらに押し出してくるのは時間の問題と思われる。
 母が亡くなった年には、夏場にイノシシが墓地の地面を掘り返すという事件があり、「好物の笹の地下茎を食べに来たに違いない」という御託宣が、母の知恵袋から取り出された最後の一葉になった。
 敷地内に梨の木があると知ったのも、イノシシ事件と同じ2018年8月のことである。竹林に押しまくられて立ちすくむ態の木の枝に、紛う方なき梨の実がついた。しかも一個だけ!もいで食べれば店売りの商品には及ばぬものの、確かなその風味が口の中に拡がったから間違いない。
 木は実によって知られる ~ 「あなたがたは、その実で彼らを見分ける。茨からぶどうが、あざみからいちじくが採れるだろうか」(マタイ 7:16)




 サクラなどによく似た花姿はバラ科の証。竹林の北側で陽当たりが悪く、それでかどうか、これだけ花を咲かせるのに実がほとんど付かない。
 「バラ科は、結実させるのが難しいようだ」と父。アンズ、リンゴ、アーモンドなど連続して苦杯を喫し、似たような白い花ばかりがあちこちで春を謳歌している。環境との相性もあろう、柑橘類なら放っておいてもよく育つ瀬戸内の風土である。

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