木工の万華鏡作家、高林千稔さんの新作をご紹介します。タイトルは「Not fire, Not ice」・・・この曲を聴きながら製作した作品だそうです。細いラインが3本入った寄木細工の作品は、木目や木肌の色の美しさを生かした加工で、その感触と持ちやすさが心地よい万華鏡です。一体化しているように見える筒ですが、実際はセルの部分だけなめらかに回転する仕組みが組み込まれています。高林さんがこの万華鏡でやってみたかったこと。それは彼がこだわって、ずっと求めていた良いオレンジのガラスロッドがやっと見つかって、オレンジがらみの色をつけた万華鏡を創ることでした。
オブジェクトセルの背景はブラウン。サイドから光を取り込み、その光が高林さん特有のオブジェクトに陰影をもたらします。正確に言うと、陰影を出すために一つ一つバーナーワークで造形したオブジェクトなのです。大胆でありながら、よく考えられたオブジェクトのデザイン、構成によって、映像は力強く、時になまめかしく、変化し続けます。作家さんの感性がよく表現されていると思います。
学んだ木工の技術を生かした万華鏡をデザインし、飾ってみたくなる作品、そして覗いてみたくなる作品を創り続ける若手の作家さんです。