橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #391≪ニッポンに物申す≫

2020年03月23日 | EHAGAKI

COVID-19
歴史に残る事態が進行中で、落ち着かない日々が続いております
皆様におかれましてもくれぐれもご自愛ください

何が正しいか、それは一定の時が過ぎてから、ふりかえり検証するしかない訳ですが

まぁ、文句のひとつも言いたくなります

そして
日本の問題点を認識し、良くして行きたいものです

さて
前々回、故:立川談志師匠の話題の中で地震予知について書きました

◆地震予知

「地震予知なんてできるわけない。
 研究者はできると言い張ってカネをもらってるたけだ」
と、よく言っていた

根拠は不明だが、得てして天才の直感というのは当たるモノ
「地震予知はできない」ことを
「予知」していたのかもしれない

そこで「※橋長注」としてラジオ番組での話題に触れました
EHAGAKI #389≪業の肯定≫2020年02月13日

今回のお題は「ニッポンに物申しす」であります

地震学者で東京大学名誉教授のロバート・ゲラーさん
が書かれた本からであります

様々な日本の問題点を指摘しておられますが、広範囲に渡るので
今回はその中から
「第一章 地震予知という幻想」とラジオ番組での話を取り上げます


◆ロバート・ゲラーさん1952年、アメリカ・ニューヨーク市生まれ
カリフォルニア工科大学から同大学院に進んで地震学を研究
スタンフォード大学の助教授を経て
◇1984年に東京大学初の「任期なしの外国人教員」として招かれ来日
専門は地震波動論と地球内部構造の推定
◇1991年「日本の地震予知計画は、成功の可能性はない」と
厳しく批判した論文をイギリスの科学雑誌『ネイチャー』に発表
地震予知研究や予知を前提にした政府の防災対策には批判的な立場を取る
◇1999年に東京大学大学院理学系研究科の教授
◇2017年に定年退職、東京名誉教授となったいまも
鋭い舌鋒は衰えず新聞・テレビ・SNSなどで積極的に発言

『日本人は知らない「地震予知」の正体』(双葉社・2017年)
『ゲラーさん、ニッポンに物申す』(東京堂出版・2018年)
◆TBSラジオ1月18日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」にゲスト出演

本当は多くの地震学者は予知はできないと分かっている。
マイクやカメラがないところではみんなそう言っている(笑)。
でも、予知できないと言うと研究予算がもらえない。
だから、予知はできないとは言えない。 ゲラーさん 


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

◆地震予知

1995年1月17日の阪神・淡路大震災から25年
今、多くの人が南海トラフ巨大地震や首都直下地震を恐れている

◇今後30年以内にマグニチュード8~9クラスの
南海トラフ巨大地震が発生する確率は70~80%

◇マグニチュード7クラスの首都直下地震は70%

政府の地震調査委員会はこのように想定
この数字、どこまで信憑性があるの?
地震予知は果たしてどこまで可能なの?

◆「予知」と「予測」

◇予知とは地震が
「いつ」「どこで」「どのくらいの規模で」
起きるのかを予測すること

例えば
「3日以内にマグニチュード8の地震が東海地方で起きる」
というような、具体的で短期的な予測が予知

これが精度よく予測できれば、「地震予知はできる」となる

◇予測とは地震調査委員会が行っているような確率論的な予測

◆「地震予知」は幻想

地震予知(短期的な予知)のカギを握るのが「前兆現象」
予知に有効な「前兆現象」を探してきた
微小な振動をはじめ様々なことを観測し、膨大なデータを集め
地震発生との関連を探る研究がずっと続けられている

ところが成功していない

前兆現象があっても地震が起きないケース
反対に、前兆現象が起きていなくても地震が発生したケース
また、地震のあとに
「地震雲が現れた」
「普段おとなしいうちの犬がやたらと吠えていた」
「井戸の水が急に減った」
いずれも地震の「前兆現象」として科学的に認められたものは無い

つまり短期的な予知はできない
では

◇確率論的な地震予測は

南海トラフ地震も首都直下型地震も
近いうちに起きることは間違いない

ただし、ここで言う「近いうち」とは

「明日」かもしれない
「20~30年後」かもしれない
「100年後」「1000年後」かもしれない

46億年という長い時間を刻んできた地球にとって
はこれくらいの幅も「近いうち」の範囲


◆「大震法」が招いた混乱と弊害

1970年代日本の地震学の研究者たちは
一種の「群集心理」に駆られていた

周期説を信じた研究者たちは
「東海地震」が差し迫っている、と思い込み
社会に向けてその危険性を煽った

彼らはあちこちで
「東海地震は明日起きても不思議ではない」と
大声で言って回りテレピと新聞はこの騒動を大々的に報道した

そして、政府、 マスメディア、一般の人々は
「差し迫っている東海地震」を揺るぎない真実として鵜呑みにした

◆1978年

東海地震を想定した大規模地震対策特別措置法(大震法)が施行された

大震法は
「東海地震の前兆現象を観測する」という前提のもとに作られた法律
内閣総理大臣は気象庁の報告を受け、閣議を経て、警戒宣言を発令する

この法律にとって
信頼できる前兆現象が存在することは不可欠だった

だが40年前もそして今日に至ってもなお
科学的に信頼できる前兆現象の存在は全く認められていない

すなわち
大震法の前提はサイエンス(科学)ではなく
サイエンス・フィクション(空想科学)だった

◆大震法に科学的根拠は無かった

長年にわたって少なくとも1978一1995年の間
この神話はまかり通っていた
これは一種のマインドコントロール

マスメディアで「東海地震」という言葉が繰り返し使われるため
人々はこういう「シナリオ地震」がすぐ起きると疑わなくなった

また大震法成立に加担した主要御用地震学者たちは
自分たちが犯した誤り
自分たちの恩師とさらにその恩師が犯した誤り
その総括をしていない

マスメディアは「東海地震説」が明らかに誤りだった
とはっきり報道すべき

御用地震学者たちが支配する地震本部の発表を
なんの疑問もなく、そのまま報道することを直ちにやめるべき

地震本部の発表は「一つの意見にすぎない」

◆南沸トラフ巨大地震

2000年頃、御用地震学者は「東海地震」というシナリオ地震から
「南沸トラフ巨大地震」というシナリオ地震に乗り換えた

後者は東海地震、東南海地震と、南海地震という3つのシナリオ地震が
同時に起きるという「合体シナリオ地震」だ

乗り換えるなら
主張し続けてきた「東海地震」単独説は間違っていたので取り下げ
そのうえで
「南海トラフ巨大地震」に差し替えることにすると
きちんとお詫びと説明をすべき

だが、このいすれも行っていない

◆実は政府も地震予知に「白旗」をあげている

2017年、内閣府・中央防災会議の調査会は
「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について」
という調査報告書を発表

「現時点においては、地震の発生時期や場所、規模を
確度高く予測する科学的に確立した手法はなく
…(中略)…
確度の高い地震の予測はできないのが実情である。
このことは、東海地域に限定した場合においても同じである」

ところが大震法は廃止されていない
約40年ぶりに内容を見直し

対象を東海地震から南海トラフ地震に拡大

確度の高い地震の予測はできない
しかし南海トラフ地震の予知は可能
と言っている

政府の言っていることは国会答弁のようなもの
ウソではないが、ミスリード
その政府発表を真実のように垂れ流すマスコミは
戦争中の大本営発表と同じ

◆予算配分の問題

地震予知の研究をまったく否定するわけではない
そこにかける
予算と労力をもっと基礎研究と防災対策にかけるべき
そして
いまの科学では地震予知はできないということを認め
特定地域の危険性をことさらに煽るのではなく
日本全国に同じようにリスクがあることを伝えなければいけない

南海トラフ巨大地震や首都直下型地震地震のリスクはある
しかしまた
地震はどこでも起きる



◆今こそ「大リセット」

国の防災政策も、地震学研究も正常な状態に戻すべき
今こそ「大リセット」が必要

まず
国がこれまでの60年間にわたる地震対策の誤りを公に認めること
1995年のような
「ポロ隠しの中途半端見直し」を繰り返してはならない

防災のあり方は
「南海トラフ巨大地震」と「首都圏直下地震」への
予算などの重点的な資源配分から
「いつでもどこでも不意打ち地震」に備えることに切り替えるべき

一言でいうなら「想定外を想定」すること
地震大国である日本において
防災は、国防と同程度に死活問題

速やかに抜本的見直しに着手するべき

◆一部の研究者の独占を廃止せよ

一方地震学観測と研究については、白紙に戻すべきである
具体的にいうと、以下のことを行う必要がある

1.「防災」と「地震学観測及び研究」を切り離す
今の地震学は防災に直接役立つものではないから

2.観測網の設置・運営の合理化を図る
現在気象庁の観測網と地震本部の観測網が並立している
これは一本化・合理化すべき

観測網とは業務(緊急地震速報、津波警報、起きた地震の震源決定)
だけでなく研究にも同じように利用されるもだから
分けておく必要は全くない

3.観測網運営と研究体制を切り離す
そもそも税金で賄われる観測網運営は
業務にも研究にも不可欠であり、得られたデータは広く公開されるべき

4.人事を刷新する
地震本部系列の研究者がデータをほとんど独占
同時に、ほほ自動的に研究費配分を受けている
その組織のトップは地震調査委員会の委員長である
平田直氏(東京大学地震研究所教授)
彼は大震法の生みの親だった故浅田敏氏の弟子

地震学分野における一部の研究者の独占を廃止して
健全な競争的研究費配分を導入すべき
さらに言うと
これらのことを実現するために必要不可欠なことが一つある
それは、具体的には、現在の地震本部を廃止すること
このような改善が出来れば
日本の地震学研究は飛躍的に活性化する

◆残念ながら

日本政府はこの程度の問題すら自力で解決できない

どの政権も地震予知問題に一度もメスを入れていない
改革のふりをせざるを得ない時も、毎回中途半端

今こそ問題解決能力が問われるときである


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

ということでした

「都合が悪かろうが、良かろうが、まず事実を伝える」
ということの優先順位が低い、我が日本であります

それに反して、しがらみの無い発言は、力強いものです

自分で考え、見極め
自分の中にあるお天道様と相談して判断したいものです

ではまた