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人に優しい世の中に

2012-12-24 | 日記

なんて、私が言うと柄にもないと突っ込まれそうだけど、きのうはちょっと考えてしまった。

固有の地名を上げるなら広島駅。歳の頃なら30くらいの男性が車椅子に乗っている。南口は駅ビルのエレベーター利用するので地下へ降りられるけど、地下の通路を通って新幹線口に上がるのは階段とスロープしかない。私のだいぶ前を通っていた車椅子の男性がスロープに差し掛かり、必死で漕いでいる。

大勢の人が通っているのに誰も助けてあげず、階段の方からさっさと地上に上がるんですね。遠くから見ていて悲しくなっちゃった。私は近づいたので「押しましょうか」と声をかけて地上まで押して上がった。スロープは勾配が緩いので、女手でも簡単。

「ありがとうございます」と言われたので、「このくらいお安い御用ですよ。気を付けてね」と言って出たところで別れた。うちの息子たちと同じくらいの歳。ついほだされてしまった。一人暮らしなんだろうか。押していると、長い間、髪を洗っていないような匂いがした。

世の中、健常者と障がい者と分けるけど、一人一人の年齢、体力、体の調子は違うし、線引きできるものでもないと思う。障がい者に優しくない社会は、体の具合の悪そうな人や、年寄りにも優しくない社会。

いずれ自分も年寄りになるし、おかげさまで今は健康な私と私の家族だっていつ病気になったり、障がい者になるかもしれない。ちょっとしたことを気楽に手助けできる世の中の方が絶対に安心。どうしてみんな知らんふりで通り過ぎたのかしらとちょっとショックだった。

いい子ぶってるみたいでとっても嫌なんですが、みんなが自分にできるちょっとしたことをするだけでもだいぶ違うと思う。

それから広島駅の自由通路。改装するという話を聞いた気もするけど、違ったかな。車いすや足の不自由な人、重い荷物を持つ人が通過できないなんて、市の玄関口なのにあまりにお粗末。国際平和文化都市だそうですが、名前が恥ずかしがってませんか。

新幹線口のエレベーター、絶対必要ですよね。市?県?JR?どこへ言って行けばいいんでしょう。

新幹線口、旧国鉄の木造平屋の官舎に替わって、シェラトンとかいう外資系のでっかいホテルが建ち眺めは一新、その近くで車いすの人が難儀してるなんて、悲しすぎます。

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「西行」 高橋英夫

2012-12-24 | 読書

誰とてもとまるべきかはあだし野の草の葉ごとにすがる白露  山家集2180

化野念仏寺 2009年7月撮影


古来、西行に関する本はあまたあり。先日の西行物語が西行入寂後、時を経ずして書かれしものならば、こちら前世期の終わり、わずか20年ほど前の著作にして、ものの見方感じ方、けだし現代人のものならば今を生きる我らの腑に落ちると言うべきか。

むむむむ、いかん。和歌をあれこれ読むうち(詠むではなく)変な言葉遣いになってしもうた。


 

著者は東大独文科出身の文芸評論家。1933年生まれ。いまだご存命なのだろうか。

西行の一生を和歌に即して辿り、出家がいかなるものだったか、詩境はどのように深まったか、分かりやすく解説している。文学者の西行論が、結局は自分の文学観を披歴する材料として扱われるのに対し(読んでないので偏見でもの言ってます)、この本では和歌の中で見つめる西行自身の心を、公正に評価しようとする姿勢に私は好感を持った。

西行はただ単なる漂泊の詩人にして隠者ではなかった。身を聖に置きながら、歌を通じて人と関わり、武士の豪気を内に秘めた心の強い人でもあった。その強い心で自然を見、その中に自分の心を見る。

それまでの歌が自然の中に自分の心が溶け去ってしまうのに対し、自然を見ることで自分の心象に気が付く。押さえようもなくわきおこってくる荒々しい自我。それを素直に歌い、どうなるのか、目を凝らしてみている。なんかものすごく文学性があると思った。この時代の人はふつうこんなに自分に執着しないし、文字に残しもしない。

旅をして各地を歩きに歩き、気に入ったところには庵を結んで二、三年滞在。縁が尽きたらまた旅に出る。でも歌壇の評価も気になり、俊成、定家に自作の一人歌合せの評を頼んだりしている。

旅をする人に憧れ、思いを字に残せる知性に憧れ、歌われた内容に読む者の意識下の心が共振する。西行の人気はこんなところだろうか。

いいなあ、風景を見ただけですっと歌の詠める人は。有り触れた眺めも言葉が添えられて風景として完成する。

私の好きな歌をいくつか。

番はねどうつればかげを友として鴛鴦住みけりな山川の水 

     こうありたいものです

あくがるる心はさてもやまざくら散りなんのちや身にかへるべき 

     公園にずらりと並ぶソメイヨシノは大通俗。桜と言えば山桜。

年たけてまた越ゆべきと思ひきや命なりけり小夜の中山

     ちょっとはまりすぎだけど、越→来にして、再訪した地名を入れたら即興の歌になるのでよくお借りしています。

     デズニーランド、東京タワー(解体?)などなど。修学旅行で行った京都の神社仏閣も可。

見るも憂しいかにかすべきわが心かかるむくひの罪やありける

    因果応報を言うところは時代の制約。自分の心をしっかり見ているのは近代文学のようでもあり。

他にもいろいろありますが機会を改めてまた。

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