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「沖縄戦を知る事典」 吉浜忍 林博史 吉田由紀編

2019-08-10 | 読書

今年6月発刊の新しい本です。

三人の、戦後生まれの沖縄戦の研究者が中心になって、沖縄各地の地方史の専門家の執筆も仰ぎ、章立てにして、沖縄戦全体が網羅できる内容となっています。

自分の関心のあるところから読み始めてもいいし、関連図書、関連の慰霊碑や戦跡、その章と関係ある人物なども併記し、さらに深く学習できるようになっています。

先月沖縄に行き、あまりに自分が沖縄戦のことに無知なことに気が付き、とっかかりとして読んでみました。

広島に住んで、原爆のことは比較的聞く機会もありましたが、沖縄戦の悲惨さは広島と同じ、場面によってはそれ以上だと思いました。

この本の中で、1945年2月、時の総理大臣近衛文麿が、戦争を止めることのできるただ一人の人に「勝ち目はもうないから降参したらどうか」と進言しますが、「負けるにしてももう一度反撃してから」と聞き入れてもらえなかったことが明かされています。

もしこの時やめていれば、沖縄、広島、長崎はなかったし、日本各地の空襲被害もほとんどがなかったはずです。歴史にもしはありませんが、私は残念でたまりません。

もう一つは戦争の残酷さです。アメリカは敵なので艦砲射撃もするし、逃げ込んだ洞窟を火炎放射器で焼くこともする。もっと残酷なのは、日本軍が住民の食料を奪い、隠れ家を追い出し、最後は足手まといになる、協力しないスパイ、敵への投降は許さないと住民を虐殺する、あるいは集団自決に追い込むことです。

また10代半ばの中学生や女学生、戦争に行かない年配の人を動員して軍の仕事をさせる。負け戦になり追い詰められると、動員した民間人を見捨てる。などなど、具体的な話がそれぞれは簡潔にですが、まんべんなく取り上げられていて、私のような初心者にもわかりやすく読みやすかったです。

東北大震災の時、自衛隊が活動する映像が流れ、私自身、自衛隊に抵抗感が少なくなりましたが、それは平時だからこそ。戦争になると軍は民間人を守らないことがよく分かりました。

軍が守るのはまず国土、負け戦と分かり、命令指揮系統も崩れてしまうと、一人一人の兵士は殺人の道具を持った極めて危ない人。自分の命を守るためには、自分以外のもの、敵国の軍人だけではなく、自国の民間人も平気で殺すという実も蓋もない現実。

戦後、戦死者の遺族には国から遺族年金が出ていました。しかし、沖縄戦で、軍に動員されて亡くなった人たちに同等の手当てはあったのでしょうか。私が知らないだけかもしれませんが、貰ったと言う話は聞きません。国が沖縄戦の犠牲者に頬かむりしていていいのでしょうか。

島全体が戦場になり、食べ物も乏しい中、隠れ、彷徨い、亡くなったたくさんの人。こういうことがないようにするためにはどうしたらいいか、重い重い課題を突き付けられたと思います。


2012年、ドイツへ旅行した時、ツアーに沖縄から参加されたご夫婦がいました。

ドレスデンのレストランでつい沖縄の話になり、「アメリカ軍はいざとなったら沖縄を守ってくれるでしょうか」と言われるので「それはわからない」と答えた私。アメリカが基地を置いているのは最後は自国の国益のため。沖縄一つ、放棄してもいいと決めたら守らないと思う。そこまで言うのは遠慮しましたが。

軍が国民を守ってくれるのは幻想。沖縄戦は本土決戦を遅らせ、国体を守ろうとした最後の悪あがき。そのために何人の人が死んだのかと問いたい。

個人には何の恨みもありませんが、その制度を残してありがたがるのは感覚として解せませぬ。人様のありがたがるものを一緒にありがたがらずに悪いのですが。

今はリゾートになっている沖縄のあの島この島、戦争の歴史があることを具体的に初めて知りました。時間なくて資料館はほとんど見てないので、また機会があれば。

沖縄戦で亡くなられた多くの人たちのご冥福をお祈りします。

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