久しぶりにこの作家の小説読みました。期待にたがわず、とても面白く読みました。
小松は大学の非常勤講師、うさちゃんはネットゲームをするときのハンドルルームで、本名は宇佐川。どちらも独身の男性で居酒屋でたまたま知り合った関係。
小松は新幹線の中でスマホを拾い、それが縁で同い年の女性と知り合う。彼女は離婚して独り者、昔は自動車学校の指導員、今は家族や友人の振りして入院患者に見舞いに行く、派遣業のように仕事をしている。
小松と女性の関係は一進一退、女性は歯がゆい。昔の教え子だった派遣業の経営者は、退院した人も対象に仕事を増やし、女性は新しいスタッフの指導役を任されてなかなか辞めさせてもらえない。
宇佐川は仕事に忙しいサラリーマン、しかしネットゲームの世界では一つの軍団の主宰者、軍をまとめて戦術を練り、自らも闘い、大変そうである。
この本に表現される人間関係、リアルもネット上も等量にリアル。また言い換えれば、ポスドクの寄る辺ない生活、家族や友人の振りをするのが収入になる暮らしは、今の時代の人の希薄な生き方をよく表していると思う。ここには家族は出てこない。
がしかし、最後の落ちはいろいろなものが腑に落ちていくと言う結末。
読んでカタルシスがあった。