黒井千次氏は、現在87歳くらい。15年前から10年くらい前に読売新聞夕刊に連載したエッセィを一冊にまとめたもの。
作家デビューは1970年前後、作家を世代分けすることはもうなくなったけど、当時は第三の新人とか呼ばれていたのではと思う。←うろ覚え。
もう亡くなった後藤明生なども確か同じ世代。
先行する世代と違うのは、日本の戦後社会も落ち着いたころに作家デビューし、同時代に生きる人々の生き方、感覚などをうまく表現した人だと思う。
若いころは勤めの経験もあり、その経験も作品の中には生かされていると思う。
私の好きなのは「たまらん坂」。東京郊外の場の持つ奇妙な力と、はぐらかされ手ごたえのない時代の感覚がうまくミックスされている。
老人の恋を描く「高く手を振る日」もよかった。老人って、恋しても、その先には進めないんですよね。結婚するわけにも行かず、それだから相手を求める気持ちはピュア。そう、小学生のように。ただ、相手の女性(ばあちゃん)が息子一家とロンドンへ去る結末は、私は不満。
バングラデシュなら、ギニアなら、ザンビアならどうよ。きれいに閉じるより、想像力をもっと掻き立てられたのに。
おやおや、この本の感想ですよね。
新聞連載という制約があるので、全体に物わかりのいいエッセィになっていると思う。
若者や中年の無礼にもっと怒ってもいいのでは。頑固になり、昔のことを持ちだして注意するのも老いの特権。もっと言って欲しかったけど、とっても内省的。これはお人柄から来るのでしょう。
年取ったからって、性格変わらないですもんね。
それと70代も半ばになると、電車で座りたくなるものらしい。そうなんだあ。
今の私は(来月古希+1歳)、空いてたら座るけど、市内電車、乗るのは短時間なので、立っても平気です。席譲られないよう、優先座席には近寄らない。
若い人でも、体調悪かったりは目に見えないので、まあ、体力のある間は立っていましょう。
老人がどんなものか、参考書のつもりで読んだけど、私はこんなに穏やかでいい老人になれそうにない。
そりゃそうですよね。若者が千差万別のように、年寄りだっていろいろ。そのいろいろな年寄りがいると言うところが大いに参考になりました。