■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 農業の労働生産性をどう高めるか 3308-4912
経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。
【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。
また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。
■ 農業の労働生産性をどう高めるか 3308-4912
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第1次産業である農林水産業が製造・加工 (第2次産業)・流通・販売(第3次産業)を担い、収益性の高い経営を展開する「6次産業化」は、衰退する日本農業再生の大きなカギを握る取り組みだ。農家の所得を引き上げ、新規雇用にもつながる。ひいては、地域の活性化にも貢献できる。まさに「1×2×3」の相乗効果が期待できる。
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青森県弘前市でりんご園を経営するM園は、6次産業化にチャレンジし、大きな成果を上げている株式会社だ。りんご栽培の傍ら、摘果した実を有効利用したりんごのアルコール飲料「テキカカシードル」の製造を2017年にスタート。品評会で国産銘柄初の大賞を受賞するなど高い評価を受け、今では年間3000万円もの売り上げを生む商品に成長させた。もともと摘果した実はそのまま畑に捨てられて、肥やしになってしまうもの。「無」から「有」をつくるビジネスを生みだした。
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事業にチャレンジしたのは、代表取締役のM氏。「農林水産業の労働生産性をみると、1時間・1人当たりで1500円くらい。全産業平均の3分の1もない。これでは農業は淘汰されてしまう」。そんな危機感からだったそうだ。100年以上の歴史を持つりんご園の経営を2015年に父から引き継ぎ、法人化した。園で栽培されているりんごの木すべての収穫量や作業内容を調べ上げ、デジタル技術を活用してデータ化。すると、非効率な作業の実態が浮き彫りになった。「手入れに手間がかかり、それなのに収穫の少ない品種に何時間も労働力を浪費していた。正直、ぞっとした」と振り返る。
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この取り組みをきっかけにM氏は労働生産性の高い農業経営を追求。りんご園の品種構成の見直しに着手する一方、新たな事業の創出を目指した。テキカカシードルを軌道に乗せるまでの話は実に興味深かった。ビジネスのアイデアをコンテストに提案。準グランプリのお墨付きを獲得し、資金調達につなげて事業化する。ここまでのシナリオはスムーズに進んだが、大きな壁にぶつかる。販路が見つからない。社員が全国を行脚して販路を開拓。地道な営業が実を結んだ。
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テキカカシードルの事業化で、M園の労働生産性は飛躍的に向上。目標とする全産業平均の金額に一歩一歩近づいている。さらなる高みを目指し、旧来型のりんご栽培とは一線を画した新たな栽培法にも試験的に取り組んでいる。
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DXという言葉が姿勢にありますが、M氏のデータのデジタル化は、本人はDXを意識していないかも知れませんが、まさに農業のDXに取り組んだ結果の現状認識だと言えます。
M氏のチャレンジをみますと、ビジネスの舞台は農業ですが、都会で起業を志すスタートアップしている人や起業の姿がシンクロするように思えます。起業・創業のノウハウをいかに身に着けるかが、6次産業化成功の重要なポイントと考えられます。
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出典: e-中小企業ネットマガジン