goo blog サービス終了のお知らせ 

ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

ガンの放射線療法その2

2016-03-25 10:43:23 | 健康・医療
ガンの放射線療法について前回ガンマナイフなどを書きましたが、本題としてはホウ素と中性子線の話です。

ガン細胞と正常細胞を比較すると、ガンにはいろいろな物質が集まりやすいことが知られています。その代表例がブドウ糖で、これはいわば栄養分として蓄積されるのかもしれません。これを応用してフッ素が入ったブドウ糖の仲間をガンに集め、それを撮影して画像にするのがPET検査です。

その他金属類もガン組織に集まることが知られています。どこまで実用化されているかわかりませんが、骨転移などにストロンチウムが使われています。これはガン組織に集まるというよりは、カルシウムと似た性質を持つストロンチウムが、骨代謝が活発なガン組織近くに集まることを利用したものです。非常に弱く数ミリ程度に放射線を出すストロンチウムの放射性同位元素が使われるようです。

その他ジルコニウムなどもガン組織に集まるようで、ごく微量を投与しその放射線を撮影し、ガン組織に有意に多く集まる場合は、治療できる程度の量を投与するといった試みが行われているようです。

今回その治療装置が完成したと報道されたのが、ホウ素を用いる治療法です。これはかなり昔からホウ素中性子補足療法として知られていました。原理としてはホウ素10という核種を、ガン組織が取り込みやすいような形に細工して投与します。これに弱い中性子線を照射すると、ホウ素10がリチウム7とヘリウム4という核種に分裂します。この新しくできた核種は、数ナノメートルというごくわずかな距離しか飛びませんので、ガン細胞だけを殺しその他の組織には影響がないとされています。

体内で核分裂を起こすという、やや怖いような方法ですが、非常に治療効果は高いようです。しかし中性子線を出すのが難しく、従来は京都大学原子炉といった大学の原子炉でしか発生できなかったようです。この方法の利点は投与したホウ素が、すべてガン組織に集まらなくても、中性子をガン組織にだけ当てるため、正常細胞のダメージがない、つまりほとんど副作用が出ないようです。

今回はこの中性子線を、比較的コンパクトな装置で発生させる技術ができたようです。これはもちろん薬ではなく核種という物理学の話ですので、どうすれば簡単に中性子など出せるのか、全くわかりませんが、色々な面での進歩というのはすごいものだと感じます。現在はまだ悪性脳腫瘍のような限られたガンしか試験されていないようですが、こういったガン細胞と正常細胞の区別という、化学療法では難しい課題が色々な形で解決し始めているようです。