ごっとさんのブログ

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近赤外線でガン縮小

2016-08-24 10:32:04 | 健康・医療
アメリカ国立保健研究所(NIH)が、体に無害な近赤外線を当ててガンを攻撃する免疫を活性化させ、がんを縮小させることにマウスで成功したと発表しました。

ガン細胞は、免疫を抑える働きのある「制御性T細胞」を利用して、ガン細胞を攻撃する免疫細胞から巧みに逃れているとされています。この制御性T細胞というのは、免疫細胞の一種で昔からその存在は知られていましたが、色々な役割が分かったのは1990年代後半のようです。

もともとは単に過剰な免疫反応を抑える働きをする細胞として認識されていましたが、免疫反応での最も重要な役割である、自己と非自己を見分ける働きに関与することが分かりました。この制御性T細胞はあらゆる組織に存在し、これがあると他の免疫細胞が自己であると認識して攻撃をしないというシステムのようです。

実際はもう少し複雑なようですが、ガン細胞はもともとは正常細胞ですので、この制御性T細胞を持っており、そのため免疫システムが働きにくいわけです。そこでこの研究チームは、制御性T細胞に結合する性質を持つ抗体に、光を受けると発熱する化学物質を結合させた薬を作り出しました。

この薬を肺ガンや大腸ガンを皮膚に移植したマウスに投与したわけです。その後患部に近赤外線を当て、化学物質の発熱により、ガンの周囲にある制御性T細胞を死滅させました。その結果ガン細胞は免疫細胞の攻撃を受けるようになり、ガンを一時的に大幅に縮小させることができたとしています。

さらに光を当てていない部位のガンが縮小することも確認でき、これはガン細胞を攻撃する免疫細胞が体内で移動しているためと推測され、転移したガンにも効果が期待できるようです。この辺りの実験結果については、この説明ではあまり正確でないような気もしますが、こういった実験では予期せぬ効果が出ることは多いようです。

私は先に書きましたように、過剰な免疫反応を抑えるという点で、この制御性T細胞が自己免疫疾患の治療に使えないかということに興味を持っていました。今回の実験ではこの制御性T細胞が、ガン細胞を免疫細胞から守っているということが確認できたわけで、新たな興味が出てきたと言えます。

研究チームは、すでにこの化学物質を利用した治療方法を人間の頭頸部ガンの末期患者を対象にした治験を米国で行っているようです。ガン細胞を狙い撃ちにする、免疫細胞を利用した今回の方法が実用化できれば、今まで以上の高い治療効果が期待できるのかもしれません。