ごっとさんのブログ

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魚のうろこから糸を開発

2016-12-04 10:39:47 | 化学
兵庫県の企業が魚の鱗を原料としたコラーゲンから、高強度の糸を開発したというニュースが出ていました。

開発したコラーゲン溶液の濃度を高め、絹のようなしなやかさと頑丈さを実現したようです。人間の靭帯や腱の組織はコー減線維からできており、今後は医療機器メーカーと連携して医療分野での応用を見込んでいます。

コラーゲンについてはこのブログでも、ずいぶん前になりますが、動物体内で最も量の多いタンパク質として取り上げたことがあります。コラーゲンは3本の鎖がらせん状に巻き付いたような構造を持っていますが、熱が加わるとこのらせんがほどけていきます。

現在美容のためや健康とためとして、コラーゲンが注目されているようです。しかしコラーゲンはたんぱく質の一種ですから、飲んだり食べたりすると、消化されて分解されてから吸収されます。一説によるとコラーゲンはヒドロキシプロリンという特殊なアミノ酸が入っていますので、完全に分解されずペプチドとして吸収されるようです。

このペプチドが健康や美容に良いとされているようですが、ほとんど根拠はないと思っています。大体コラーゲンは動物体内で最も多いタンパク質で、総タンパク質の30%を占めるとされていますので、豚や牛の肉だけではなく魚などでも普通に食事をしていれば、かなり大量のコラーゲンを摂っていることになり、健康食品やサプリメントのコラーゲンを飲んだりしても、いわば誤差範囲程度の増量になるだけです。

なおこのコラーゲンの螺旋をほどいたものが、ゼラチンですので、これを使用したプリンなどを食べれば、これもかなりの量のコラーゲンを摂取していることになります。

さて本題ですが、この企業は10年ほど前、鱗由来のコラーゲン溶液を開発し、特に魚の「テラピア」のコラーゲンは、人間の体温と同程度でもらせん構造が保たれ、隙間に水がからんで保湿性を維持するようです。この特性を生かして、この溶液は化粧品原料に採用されています。

糸状への加工は、兵庫県工業技術センターと共同開発しました。濃縮した溶液を小さい穴から押し出し、引っ張ることでらせん構造をくずさずに、粘り気が強く切れにくい繊維を作り出しました。医療分野以外にも、強度を生かして衣服への応用も可能性があるとして、医療機器や繊維メーカーに試料を供給しているようです。

まだ実用化には数年かかるようですが、費用対効果を見極めながら進めていくようです。タンパク質の線維というと絹がありますが、こういった天然に大量に存在するものをうまく利用できれば、安全な面白いものができそうな気がします。