ごっとさんのブログ

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AI活用で新薬開発時間を短縮

2020-03-04 10:26:22 | 
日本とイギリスの製薬会社が共同で、AI(人工知能)を活用して造られた新薬候補についてフェーズIの臨床試験を開始したと発表しました。

新薬候補は「DSP-1181」と呼ばれ、強迫性障害の治療薬として開発しています。AIを活用することで、製薬業界の平均で4年半かかるという探索研究を12カ月未満で完了したようです。

探索研究では、こんな構造・成分であればよく効いて安全で飲みやすいのではないかという仮説を立てて、化合物のデザインをします。このデザイン通りに化合物を合成し、仮説通りの効き目があるか、安全であるかなどを実験により確かめていきます。

このデザインにAIを利用するという発想は、私が現役のころの40年前にもありました(AIという言葉は無かったのですが)。

それには2つのアプローチがあり、ひとつは膨大な化合物とその薬劫のデータベースを作る方法ですが、これには非常に時間がかかり当時では困難でした。

もうひとつがターゲットとなる酵素や受容体の立体構造を調べ、その反応点の構造から、そこにうまくフィットする構造を推定するというものでした。この後者が先に実用化され、AI(当時は単にコンピュータでしたが)にそういった化合物をデザインさせるという手法です。

ところがこの問題点は、デザインされた化合物を実際に合成するのが難しく、非常に高くついてしまうという事でした。たぶんこういった背景を基に、現在のAIをうまく使う技術が進んできたものと思われます。

現在のAIは、膨大な情報や過去のデータを学習し、よく効いて安全で、その他の薬としての条件を満たす確率の高そうな化合物を予測・提案することができるようです。

もちろんAIによる予測だけで、そのまま薬になる化合物ができるわけではなく、そこから研究者の経験と知恵によって新たな価値を加え、薬として完成度の高いものに仕上げることになります。

それでも研究者の仮設よりも、AIが出したほうが効率よく見つかるという事のようです。この探索研究の次が前臨床研究がありますが、これは安全性の確認や実際の効果を動物によって調べる研究ですので、あまりAIの出番はないのかもしれません。

実際の創薬研究では、この前臨床の動物実験には1年半から3年くらいを必要とします。これをクリアした場合次の臨床試験のフェーズIに進みますが、今回のDSP-1181はこの段階にあるようです。

この試験では主に安全性の確認と、薬の効果が出そうな量(用量)のヒントとなる検査値を出したり、体内における薬の挙動を測定します。この様に新薬開発は進みますが、この臨床試験でもAIは活躍するようです。

こういった探索研究にAIが有効な手段になるという事は、創薬研究そのものの考え方が変わってきますが、当事者としてはあまり面白くない方向のような気もします。


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