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老化を遅らせる「老化細胞除去ワクチン」を開発

2022-08-04 10:29:59 | 健康・医療
最近老化の研究は非常に活発に行われており、このブログでもいろいろ取り上げていますが、「老化」は自然現象ではなく病気であるという説まで出てきています。

ほとんどが老化細胞に関する研究ですが、順天堂大学の研究チームは注射するだけで老化の進行を止める「老化細胞除去ワクチン」を開発したと発表しました。

研究チームはワクチンの役割は感染症の抵抗力を与えるだけではないとしています。ワクチンを接種したマウスで糖尿病につながる糖代謝異常が改善されたり、動脈硬化の病巣が縮小したりすることを確認しているようです。

この研究のキーワードは「老化細胞」で、正常細胞は一定期間ごとに分裂しますが老いた細胞(老化細胞)は分裂しません。活動をすべて停止するわけではなく、さまざまな炎症物質を周囲に活発にまき散らします。

なぜワクチン接種で老化細胞を減らせるのかは、通常の免疫系と同じように「抗体」を作り出すことにあります。

例えば新型コロナワクチンは、ウイルスの表面にある「トゲ」(スパイクタンパク質)を体内で作り出す働きがあり、このトゲの形に合わせた抗体を作り免疫系が病原体を速やかに攻撃できるようにします。

老化細胞除去ワクチンにとって、このトゲにあたるのがGPNMB(以下GPと記載)と呼ばれるタンパク質となります。このGPはリソソームと呼ばれる細胞内小器官に作用しているのではないかと考えられています。

リソソームは細胞内で不要になったタンパク質を分解する、いわばごみ処理のような機能を持っていますが、GPはその働きを維持できるようにサポートしているようです。老化細胞ではリソソームが弱り気味であるため、GPがたくさん駆り出されており、目印として活用できます。

この研究の発端となった発見は、2002年ヒトの動脈硬化の病巣に老化細胞が蓄積していることを証明したことです。その他糖尿病患者の内臓脂肪にも老化細胞が蓄積していることも証明しました。

その後血管の内側を裏打ちする血管内皮細胞の老化に関する研究を進め、2013年に遺伝子データベースを活用しGPにたどり着きました。その後8年かけて今回の老化細胞除去ワクチンの研究成果を出すことができたわけです。

2015年ごろから老化細胞の除去を目的とする研究が進み、抗ガン剤として使われているダサチニブと、植物に含まれるケルセチンを組み合わせてマウスに投与すると、老化細胞が除去されたという成果が発表されました。

今回のワクチンは、むしろGPを活性化させる物質ではないかという気もしますが、これで産生された抗体がどのような役割を果たすのかはよく分かりませんでした。

それでも老化細胞除去というのは、当面の老化に対する主要課題であり、このワクチンもその進展の一歩と呼べるものかもしれません。


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