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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

嗅覚受容体を用いたセンサー

2016-03-26 10:48:36 | 化学
東京大学の生産技術研究所のグループが、匂い受容体を用いたセンサーを開発したという記事を見ました。

この嗅覚受容体というものはかなり昔から興味を持っていました。私が現役だったころで、もう25年も前の話になりますが、当時動物細胞技術がやっと完成し、遺伝子操作により動物のいろいろなたんぱく質を生産することができるようになりました。当然インターフェロンや成長ホルモンといった、医薬品としての用途があるものから研究されていましたが、当時から注目されているものが嗅覚レセプター(匂い受容体)でした。

動物の嗅覚というのは非常に優れており、当時のもっとも高感度の分析機器の何万倍も感度が良いとされていました。またこのころシックハウス症候群というのが見つかり、建物に含まれる超微量のホルマリンなどによって症状が出るという病気です。このホルマリン量はPPBというオーダーで、分析の検出限界ぎりぎりの数値でした。そういったこともあり、感度の高いセンサーが必要とされていたのです。

ところが嗅覚レセプターというのは、膜の中に埋まったたんぱく質で、非常に難しいものの様でした。大学だけではなくかなりの医薬品・食品関係企業が嗅覚レセプターに取り組んでいるという情報がありました。私はそういった方面は専門ではありませんので、どこが難しいかもよくわかりませんでしたが、化学物質の高感度分析ができれば、私の専門にも大いに役立つと注目していたわけです。

ところがその後ほとんど話題になることがありませんでした。一つには分析方法として免疫を利用した方法である、イムノアッセイというものがどんどん進歩し、この方向で高感度化が達成できて来たということもあります。あとはやはりタンパク質の性質として、本当に難しかったのかもしれません。私も嗅覚レセプターの話は忘れていましたが、こういった研究もずっと続いていたようです。

今回のグループは、スフェロイドという匂い受容体を持った小さな細胞の塊を作成し、その周りにハイドロゲルという水分を保持した物質を配置することによって、匂いセンサーとして微量の化学物質を検出できるようになったということです。この時鼻の粘膜と同じように、受容体の表面が水に覆われていることが、機能発揮に必須だったようです。

この研究の詳細は私も理解できませんし、どこが難しいかなども触れていませんでしたが、やっと動物並みの高感度の化学物質の検出ができるようになったようです。これが実用化されるかどうかはまだ先の話ですし、こういったものが本当に必要かとは別に、ある意味私の夢が実現したような気がしました。

ガンの放射線療法その2

2016-03-25 10:43:23 | 健康・医療
ガンの放射線療法について前回ガンマナイフなどを書きましたが、本題としてはホウ素と中性子線の話です。

ガン細胞と正常細胞を比較すると、ガンにはいろいろな物質が集まりやすいことが知られています。その代表例がブドウ糖で、これはいわば栄養分として蓄積されるのかもしれません。これを応用してフッ素が入ったブドウ糖の仲間をガンに集め、それを撮影して画像にするのがPET検査です。

その他金属類もガン組織に集まることが知られています。どこまで実用化されているかわかりませんが、骨転移などにストロンチウムが使われています。これはガン組織に集まるというよりは、カルシウムと似た性質を持つストロンチウムが、骨代謝が活発なガン組織近くに集まることを利用したものです。非常に弱く数ミリ程度に放射線を出すストロンチウムの放射性同位元素が使われるようです。

その他ジルコニウムなどもガン組織に集まるようで、ごく微量を投与しその放射線を撮影し、ガン組織に有意に多く集まる場合は、治療できる程度の量を投与するといった試みが行われているようです。

今回その治療装置が完成したと報道されたのが、ホウ素を用いる治療法です。これはかなり昔からホウ素中性子補足療法として知られていました。原理としてはホウ素10という核種を、ガン組織が取り込みやすいような形に細工して投与します。これに弱い中性子線を照射すると、ホウ素10がリチウム7とヘリウム4という核種に分裂します。この新しくできた核種は、数ナノメートルというごくわずかな距離しか飛びませんので、ガン細胞だけを殺しその他の組織には影響がないとされています。

体内で核分裂を起こすという、やや怖いような方法ですが、非常に治療効果は高いようです。しかし中性子線を出すのが難しく、従来は京都大学原子炉といった大学の原子炉でしか発生できなかったようです。この方法の利点は投与したホウ素が、すべてガン組織に集まらなくても、中性子をガン組織にだけ当てるため、正常細胞のダメージがない、つまりほとんど副作用が出ないようです。

今回はこの中性子線を、比較的コンパクトな装置で発生させる技術ができたようです。これはもちろん薬ではなく核種という物理学の話ですので、どうすれば簡単に中性子など出せるのか、全くわかりませんが、色々な面での進歩というのはすごいものだと感じます。現在はまだ悪性脳腫瘍のような限られたガンしか試験されていないようですが、こういったガン細胞と正常細胞の区別という、化学療法では難しい課題が色々な形で解決し始めているようです。

糖尿病の新しい治療法か

2016-03-24 10:48:47 | 健康・医療
糖尿病は国内の患者数が、600万とも800万ともいわれ、国民病というような感じになってきています。私はそういった傾向はありませんが、友人にも糖尿病から腎不全になってしまい透析を受けている者もおり、身近な問題となっています。

最近この新しい治療法の開発がいくつか報告されています。国内の医薬メーカーからの発表ですが、ブタの膵臓からとった膵島をカプセルに詰め、ヒトに投与するとインシュリンが分泌され、血糖値が下がるという物です。

これは比較的少ないI型糖尿病の治療ですが、この型は体内の膵島が壊れ、全くインシュリンが出ないというものです。ヒトの体はうまくできており、インシュリンが不足していても少しでも出ていれば、投与してもうまくコントロールできるようですが、I型のように全く出ていないと投与により血糖値が下がり過ぎ、いわゆる低血糖の意識障害が出るようです。

そこでブタの膵島の利用する試みになるわけですが、ブタの膵島からは当然ブタのインシュリンが出るわけです。しかしこのインシュリンは、構造がヒトと非常に近く、当然機能も同じように働くようです。以前にも少し書きましたが、ブタの臓器などはかなり人間に近く、臓器などの利用も検討されているようです。

今回は完全に無菌状態で飼育したブタの赤ちゃんから膵島を取り、問題となるウイルス類の混入をなくしたようです。しかしブタの臓器ですので、当然拒絶反応が出てしまいます。そこでこの膵島を0.5mmほどのカプセルに封入し、免疫細胞と接触しないように設計しました。これで免疫反応も起きず、体内に入れても問題はなくなったようです。

こういった新しい治療法の臨床試験は、日本ではできませんので、アルゼンチンで実施したようです。

余談ですが、こういった臨床試験がある程度簡単にできるシステムが、日本にも必要な気がします。海外では製薬メーカーの病院があり、無料で診療を受けることができる代わりに、場合によっては新薬の臨床試験を受けることになります。

どうも日本ではこういった臨床試験をいわば人体実験として、頭から否定するという感情があるようです。厳密なものではなくても安全性は確認されており、こういった制度で大きな問題が起きたという話は聞きませんので、新薬開発の促進といった観点からも、必要なような気がします。

ただし日本の風土の問題やしっかりした保険制度がありますので、こういった病院が認められても、行く患者さんがいないのかもしれません。私自身を考えると、現在の治療法では治らないような病気にかかった時ぐらいしか行かないような気もします。余談が長くなり中途半端ですので、次回に続きます。

食品廃棄と消費期限

2016-03-23 10:47:17 | 時事
日本では年間1600万トンもの食料が廃棄されていると言います。

この量は民間の調査ではもっと多いようですが、これだけで600万人の1年分の食料に当たるようです。これだけでも相当もったいないと思うのですが、最近食品に関する事件がいろいろ多いようです。廃棄するために出した食品を再出荷してしまった事や、サバの缶詰の中にサンマが入っていたとか報道されています。これは犯罪ですので厳しく取り締まってほしいものです。

廃棄食品を減らせるかは非常に難しい問題のようです。我々消費者が、賞味期限や消費期限を守っている限りは無理かもしれません。本来この二つの期限は区別するべきものですが、日付だけで判断することが多いようです。

消費期限はあまり保存がきかない食品に表示するもので、なるべく期限内に食べたほうが良いものです。賞味期限というのはかなり保存可能な食品で、あくまでおいしい味が保証できる期限ですので、それほど科学的なものではなく官能検査などによって決められているようです。ですから賞味期限を過ぎたと言って安全性に問題が出るわけではなく、適度に判断すべき期限のようです。

こういった表示がいつから義務付けられたかわかりませんが、たぶん初期のころ私の会社で面白いことがありました。当時FD(凍結乾燥)食品を出しており、今ではこういった商品は一般的ですが、当社が初めてこの技術を開発したようです。それに期限の表示をしなければいけないわけですが、当時保存安全性試験は6年ぐらいしか結果が出ていなかったようです。ところが表示するのに6年先ではあまりにも長すぎるというので、1年後ぐらいを付けたようです。

期限が迫ってきたものは返品されるわけですが、その日付を張り替えて再出荷していたといいます。担当者たちは6年以上持つものだから、悪いことをしているという意識は全くなかったようです。現在こんなことがわかったら大問題になりそうですが、初期のころはその程度の認識だったようです。

しかし最近はあまりにもこの期限にこだわりすぎているような気がします。家では冷凍食品などは1,2か月過ぎても問題ないとしていますが、本来は臭いや味覚といった自分の感覚で、安全かどうかを判断すべきでしょう。特に消費期限は安全な日数の2/3ぐらいに設定しているようですので、少々過ぎても問題はないようです。

スーパーやコンビニの弁当などは、期限が近くなると安くするというようなところもあるようですが、日本人はある意味非常に潔癖なところのある国民ですので、廃棄食品は増えることは有っても減ることは無いような気もします。

BNPパリバオープン決着

2016-03-22 10:31:55 | テニス
10日間にわたって行われたパリバオープンは、ジョコビッチの3連覇で幕を閉じました。

錦織に期待していたのですが、前回書いた4回戦に続く準々決勝で、残念ながらビッグ4のナダルを破ることができませんでした。ナダルは昨年はかなり不調で、一時は順位もかなり下げましたが、今年はどうかと、錦織は苦しい試合を勝っているので、勝つ可能性はあるではと期待していました。

ところがナダルがプレースタイルを全く変えてきたのです。今まではかなり後ろから、エッグボールという非常にスピンがかかった玉を打ち込んでいたのですが、今回の錦織戦はベースライン付近から下がらず、フラット系のボールを打ってきました。非常によく拾うナダルですので、錦織は対応しきれず、ストレートで負けてしまいました。

錦織もかなり進化した感じはありますが、このビッグ4の壁を破るためには、まだまだ課題が多そうです。このトップハーフは準決勝がナダル-ジョコビッチと順当でしたが、逆のボトムハーフは、本命のマレーとワウリンカが早い段階で姿を消すという大波乱がありました。

この混戦の中を抜け出してきたのが、錦織のライバルとしているラオニッチでした。ラオニッチは昨年ケガで苦しみ、順位も少し下がりましたが、今年は順調に仕上がっているようです。4回戦でランキング上位のベルディヒを破り、サーブも好調の様でした。このラオニッチは応援していても試合を見たのは、準決勝のベルギーのほぼ同じランク、年齢のゴファン戦でした。

確かにサーブがすごく230㎞がビシビシ決まり、苦手とされていたバックもうまいスライスで返し、見事決勝進出です。こういった早いサーブの場合、サーブしてからリターンを打つまでの時間は0.6秒程度のようです。ほぼ反射的に返すといっても、予想と違っていたら対応できないというレベルで、ジョコビッチがこのサーブにどう立ち向かうのかが、決勝戦の見どころでした。

昨日の決勝戦が始まると、ジョコビッチはこの早いサーブを深い良いところに返しているのです。いわばラオニッチの最大の武器が通用しなくなり、簡単にサービスゲームを取られてしまいました。本当にジョコビッチには、信じられないような強さを見せつけられました。とても決勝戦とは思えないような一方的な展開となり、1セットは6-2でとり、なんと2セット目は1ゲームも取ることができず6-0の完敗でした。

やはりジョコビッチには、ここまで頑張ってきたラオニッチでも全くなすすべがありませんでした。この大会もジョコビッチの強さを見せつけて終わりましたが、もう明日から次のマイアミオープン(ATP-1000)が始まります。錦織がどこまで頑張れるか、期待して応援する予定です。