ジュール・ルナン『博物誌』の中の「雲雀」と題された短い一節から何行か読んでみよう。
Je n’ai jamais vu d’alouette et je me lève inutilement avec l’aurore. L’alouette n’est pas un oiseau de la terre.
雲雀は、地の鳥ではなく、空の鳥だ。だから、地上の存在である人間は、雲雀の生態を地の鳥のそれのようにつぶさに記述することは諦めざるを得ない。万華鏡のように煌めく言葉の彩を操ることに卓越した才能を示したジュール・ルナンにさえ、それはできないことだった。夜明けとともに起き出しても、雲雀の姿はけっして見ることができない。では、その「見えない」雲雀を作家はいかにして文学的に形象化するのか。
作家は、雲雀の天空の飛翔を肉眼で把捉することを諦め、眼を地に落とし、その声に耳を澄ます。すると、どこか天空の高みから、黄金の盃の中で水晶の破片を砕くような妙なる澄んだ歌声が聞こえて来ないだろうか。
Mais écoutez comme j’écoute.
Entendez-vous quelque part, là-haut, piler dans une coupe d’or des morceaux de cristal ?
Qui peut me dire où l’alouette chante ?
Si je regarde en l’air, le soleil brûle mes yeux.
Il me faut renoncer à la voir.
雲雀は天空に生きる鳥なのだ。そして、私たちにまでその歌声を伝えてくれる唯一の空の鳥なのだ。
L’alouette vit au ciel, et c’est le seul oiseau du ciel qui chante jusqu’à nous.
私たちの魂は、なぜ、この天から鉛直に降臨する透明な歌声にかくも心を動かされるのか。この問に対するバシュラールの答えを明日の記事で読んでみよう。