詩人の感性は、私たちの通常の感覚では感じ得ないことを感じ取る。それを言葉によって表現へともたらすことが詩人の仕事だ。
例えば、紺碧の空とそれを横断する鳥との対立・競合が引き起こす苦痛に詩人は苦しむ。その苦しみは、詩人によって表現されることを要求する。
空の〈青〉とそこにさまざまな形をもって現れる事物との間には、決闘とも言える緊張関係がある。その緊張関係の中で、それらの事物は、雲一つない青空にいわば「傷」を負わせる。その「傷」の痛みをを我がこととして感じるとき、十全たる〈青〉を空に回復させたいという欲求が私たちのうちに生まれる。
その〈青〉空とは、そこに万有が現前する絶対的な基底である。
この基底としての〈青〉と融合するためには、その〈青〉の上に立ち現れる一切の対象を払い除けなくてはならない。対象なき感情性、対象への投企なき純化・昇華が要請されなくてはならない。