内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「雲雀についての哲学的考察断片」スピンオフ ― 天から舞い降りてくるかの如き音楽

2018-03-06 00:09:17 | 私の好きな曲

 今日の記事は、昨日までの四話連続の「雲雀についての哲学的考察断片」からのスピンオフです。
 遥か天空から舞い降りて来るかのような雲雀の歌声についての記事を書いていて、モーツアルトのK361「13の管楽器のためのセレナード~グラン・パルティータ」第3楽章アダージョのバスーンとバセットホルンによる短い前奏後のオーボエの入りの旋律を想い出しました。あれこそ天から舞い降りてくるかの如きと形容するのが相応しい音楽の一つではないでしょうか。この一節、映画『アメデウス』でサリエリが初めてモーツアルトの天才に触れて衝撃を受けるあの有名なシーンで実に効果的に使われていましたね。
 天から聞こえてくるかのような音楽ということでもう一つ思い出したことがあります。もう何十年も前のことなので曖昧にしか覚えていないのですが、確か、吉田秀和の『私の好きな曲』(新潮文庫版)の中で読んだのだったと思います。シューベルトの交響曲第8(9)番ハ長調「ザ・グレート」第2楽章アンダンテ・コン・モートのホルンの八連下降音について、同曲をシューベルトの死後に発見したシューマンは、「天の使いが空から降りて来るようだ」と評したのではなかったでしょうか。
 どちらの曲にも、それこそ数え切れないほどの名演奏がありますね。私のお気に入りは、「グラン・パルティータ」の方は、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブルの演奏(1970年録音)。因みに、『アマデウス』の中で使われていた演奏は、ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの演奏(1984年録音)でした。これも秀演だと思います。「ザ・グレート」の方のお気に入りは、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンの演奏(1981年録音)です。ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィル(1995年ライヴ録音)のきりりと引き締まった演奏もいいですね。
 そうそう、「ひばり」繋がりということで言えば、ハイドンの弦楽四重奏曲に「ひばり」(Op. 64 N°5, Hob. III :63)というタイトルが付けられた超有名な名曲がありますね。これは第1楽章冒頭の旋律が雲雀の囀りに似ているから付けられたということだそうですが、ハイドン自身が付けたものでもなく、いつ誰によって付けられたのかも不明なままのようですね。
 この曲も名演奏に事欠きません。個人的な好みに過ぎませんが、よく聴く演奏は、古楽器演奏では、フェステティチ四重奏団。現代楽器演奏では、コダーイ弦楽四重奏団。後者は、いわゆる楷書の正統派の演奏なんですが、ほんとうにいつでも私の気持ちにぴったりくる演奏で、何度聴いてもその度になんか嬉しくなっちゃいます。
 以上、「〈ひばり〉系」の音楽ということで、「雲雀についての哲学的考察断片」と題された一連の記事の内容には直接関係しないことでしたが、一言触れさせていただきました。
 それでは、明日はまた「雲雀についての哲学的考察断片」に戻ります。