内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

書物連鎖の症例紹介 ― ステージ3

2021-03-12 19:08:01 | 読游摘録

 食べ物を無理に体内に詰め込めば体に良くないことは、いかに愚鈍な老生もわかっているし、健康維持のために食事には気をつけているので、過食・偏食はまったくしない(小豆は例外)。そのへんはかなりストイックである(と本人は思っている)。ところが、書物に関しては、完全に快楽主義に走っている(いや、暴走している)。
 たとえば、先日、こんな書物連鎖があった。礫川全次の『日本人は本当に無宗教なのか』(平凡社新書 2019年)を来年度の授業で参照することになるかも知れないと読んでいたら、磯前順一の『近代日本の宗教言説とその系譜』(岩波書店 2003年)から「国家神道」に関する一節が引用されていた。そこが気になって、引用の前後が読んでみたくなった。さっそくAmazonで検索すると、初版は古本でしか入手できないし、ちょっと高い。オンデマンド版の方が少し安い。オンデマンド版は、良書を絶版にしないための手段なのはわかるけれど、印刷製本のコスト削減ためとはいえ、いかにも造本が安っぽくて嫌いなのだが、この本はどうしても入手したくなり、発注した。どうせ日本の Amazon に発注するなら、一冊だけではなく、別の本も合わせて買おう、そうすれば送料も割安だと自分に言い聞かせ、磯前氏の『喪失とノスタルジア』(みすず書房 2007年)も注文する(もう訳がわかりません)。DHLの配送は概して迅速だ。2月25日に発注して3月1日に届いた(満足ですか?)。
 同じく『日本人は本当に無宗教なのか』の中で、鵜飼秀徳の『仏教抹殺』(文春新書 2018年)が「全国各地に「廃仏毀釈」の跡を訪ねて、その実態を明らかにした労作である」と評価されている。「廃仏毀釈」は、今年度の近代史の授業でも取り上げ、学生たちの関心度も高かった(安丸良夫の『神々の明治維新』(岩波新書 1979年)を原文で読んでレポートを書いた学生さえいた)ので、来年度はさらに踏み込んで取り上げたいと思っていたところであった。当然、「これは買いである」と即断、すぐに電子書籍版を購入。同書での鵜飼氏の問題へのアプローチの仕方に興味を持ったので、同氏の『「霊魂」を探して』(角川学芸出版 2018年)と『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』(朝日新書 2018年)もほぼ同時に購入する。
 先月から授業で宇野重規氏の『民主主義とは何か』(講談社現代新書 2020年)を読んでいる。その中で紹介されているブランコ・ミラノヴィッチの「エレファント・カーブ」について学生たちに知っているかと聞いたら知らないと言う。これは説明せにゃあならんということで、『大不平等 エレファント・カーブが予測する未来』(みすず書房 2017年)の英語原書 Global Inequality. A New Approach for the Age of Globalization, 2016 とその仏訳 Inégalités mondiales. Le destin des classes moyennes, les ultra-riches et l’égalité des chances, 2019 も購入し、紹介スライドを作成する。この仏訳には、日本でも超有名なトマ・ピケティが序文を寄せている。その中に実に簡潔明瞭なエレファント・カーブの説明があるので、それを学生たちに紹介した。最初は「エレファント・カーブ? 何それ」という感じだった学生たちもよく理解できたようであった。そのピケティに敬意を表して(って、このへんがよくわからないのですが)、かの世界的大ベストセラー Le capital au XXIe siècle(2013 邦訳『21世紀の資本』みすず書房 2015年) も購入した次第である。