前任校のことをときどき懐かしく思い出す。こっちも今よりは多少若かったし、新設学科の責任を一人で引き受けていたから、大変だったけれど、けっこう張り合いもあった。
海の物とも山の物ともつかぬ新設学科である我が学科に来てくれた学生たちにはできるだけのことをしようと思った。と言っても、大した力があるわけでもなく、空回り、空騒ぎのことも多々あったけれど。
学生たちに送るメッセージにはことのほか気を配った。単なる連絡事項のときでも、どこかにユーモアのスパイスを仕込むようにした。これがけっこう受けた。私の知らぬ間に、「K先生のメッセージ集」というページがフェイスブックに立ち上げられていた。私が学生たちに送ったメールのなかで彼らの気に入ったものを集めたアンソロジーである。
このアンソロジー、卒業生もときどき見ていたようで、あるとき、こんなメッセージが届いた。原文はフランス語だが、要はこんな内容である(ちょっと脚色していますが、盛ってはいませんよ)。
「K先生、先生の学生たち宛の今日のメッセージ、今さっき読みました。ちょっと掌小説みたい。おかげさまで、いい気分で今日一日を始められました。ありがとう。」
嬉しかった。感謝したいのはこっちだよ。
たった数行の文章でも、それを読んだ人がその日をいい気分で始めることに少しでも貢献できたのなら、書いてよかったなと思う。
でも、このブログを続けていて、つくづく思う。現実は厳しいな、と。