クインシー・ジョーンズのアルバム「デュード」は1981年4月頃発表の作品。
この中には、A面1曲目にチャス・ジャンケルの大ヒット曲「愛のコリーダ」が入っている。1981年はラジオとか喫茶店とか・・やたら色んな場所で「愛のコリーダ」が流れていた。当時中学生でYMO命だった自分には「今ごろディスコかよ」だった。この年アース・ウィンド&ファイアの「レッツ・グルーヴ」も大ヒット。
私には、アースのこのシングル曲は聴けても、「愛のコリーダ」はカラダがかゆくなり、当時は恥ずかしくてじっと聴いていられなかった。(今では懐かしさあいまって、好きな曲になったけど。)この後しばらくした83年頃のとあるサブカル雑誌には「クルマから聞こえて来たらダサいと思ってしまう曲」ベスト10の確か1位だったような気がする。
そんな背景あって、アルバム「デュード」はかすんでしまっていたが、その後深夜ラジオでアルバム収録曲「ヴェラス」に不意に出会う。
「ヴェラス」は深夜3時の番組「マイ・サウンド・グラフィティ」のエンディングテーマ曲だった。当時から不眠症だったので、眠れぬ夜はよくこのテーマ曲を深夜4時が近づく頃、暗闇の中聴いていた。(タイマー録音をすることも多かったけど、セットしたのに眠れずに起きて聴いている晩もよくあった。また、当時タイマー録音するには色んな制約があり、オートリバースを持たない自分は120分のカセットテープを使うしかなかったが、120分テープは何より高く、テープが薄く弱かった・・・。)
優しく美しい曲だな、と思ったが、初めて聴いた頃は誰の何ていう曲かもわからずじまいだった。
「ヴェラス」が深夜流れ終わると、FM東京の今日の放送が終了という案内、そしてFM東京のジングルが流れ、朝までの数時間お休みタイムになった。
(当時のFM東京は今とまったく違うFM局で、実に多様なジャンルの音楽を紹介してくれる、素晴らしい実験局だった。)
***
毎晩深夜になるとFM東京から「ヴェラス」は流れていたが、その後、「ヴェラス」という曲は別の場所に現れた。
1984年10月のテレビ番組「日立サウンドブレイク」である。
80年代には、イーノのアンビエントミュージックからの流れから派生し、スノッブや洒落臭い連中が集まるカフェバーなどの場所で流す目的もあり、環境ビデオというものが産まれた。早い話しがイメージビデオだが、乱暴な言い方をすれば、その呼称を変えてうんちくを加えたものが環境ビデオだった。
「日立サウンドブレイク」は、それがはやる前夜から始まっていた、音楽と映像が組み合わさった番組。30分という短い時間の中で一つのテーマの下、一曲一曲への説明は全く無く、選曲された曲にオリジナル映像が付く。個人的な意見だが、そこにスノッブたちの洒落臭さはなく、ときに鈴木志郎康さんとか谷川俊太郎さんが制作に関わるなど、多くの企画や良質で豊かな映像と音楽との重なり合いが、毎週自分を楽しませてくれた。
「ヴェラス」がかかった1984年10月の放送回にはテーマタイトルは無かったが、朝隈兼治さん演出の映像には海外避暑地のトロピカルな映像、でも翳りがある風景。
そこから勝手に判断したテーマは「過ぎ去りし夏」だった。下に小さくクレジットされた表示でやっとわかった曲名「ヴェラス」。その曲はこの番組でも最後を締めくくる曲だった。トゥーツ・シールマンスのくちぶえとハーモニカが描き出す優しい世界。
■Quincy Jones・Toots Thielemans「Velas」1981■
2023年異常な猛暑となった夏。
盆明けから虫も鳴き出し、陽の長さも劇的に短くなってきたけど、まだ残暑とはいいがたく、危険度ある暑さの可能性を残している。
そんな今日は台風接近に伴う土砂降り。数か月ぶりに30度を切る勢いである。