第二章 基本的自由及び権利(続き)
法的保障
【第九条】
1 裁判所以外の官庁が犯罪により、又は犯罪の疑いにより自由を剥奪した場合には、自由を剥奪された者は、不合理に遅延されることなく、自由を剥奪した機関を裁判所による審理に服させることができる。ただし、他の国の裁判所により科された自由刑を執行するため、スウェーデンに移送することが問題となっている場合は、この限りでない。
2 第一項に規定するものとは別の理由により、強制的に拘禁された者は、不合理に遅延されることなく、拘禁の件につき裁判所による審理を受けることができるものとしなければならない。そのような場合における参審による審理は、当該参審の構成が法律により定められ、かつ、当該参審の長を正規の裁判官とするとき又は裁判官であったものとするときは、当該参審による審理は、裁判所による審理と同等とみなされる。
3 審理が第一項又は第二項の規定に基づき、管轄権を有する官庁を指示していなかった場合には、審理は、通常裁判所によって行われなければならない。
本条から第十一条までは、裁判を受ける権利をはじめとする米国憲法や日本国憲法上のデュー・プロセスの原則に相当する基本規定がまとめられている。
筆頭の本条は、犯罪その他の理由で身柄を拘束された者が迅速に裁判を受ける権利を保障するものであるが、身柄拘束された者でなく、拘束した公的機関を審理に服させる権利として構成されているところが、先進的である。警察その他の強制機関は、司法的なコントロールの下に置かれることが明瞭にされている。
【第一〇条】
1 すべての人は、ある行為が実行されたときに、その行為に対し刑事制裁が科されると定められていなかった場合には、当該行為を理由として刑罰又は他の刑事制裁を科されてはならない。さらに、すべての人は、ある行為が実行されたときに定められていたものよりも重い刑事制裁を当該行為に対して科されてはならない。刑事制裁に関するこの規定は、没収及び他の特別な刑事制裁の法律効果についても適用される。
2 税及び国の公課は、税及び公課の義務をもたらす事態が生じたときに効力を有していた規定により課されるものよりも、広範囲に課されてはならない。ただし、議会が特別の理由が存在すると認める場合で、政府又は議会の委員会が議会に対して提案を行なっていたときは、当該事態が生じたときに法律が施行されていなかった場合であっても、当該法律は税及び国の公課を課すことを内容とすることができる。そのような提案を期待することについて政府が議会に文書により通知することは、提案と同様にみなされる。さらに、議会は、戦争、戦争の危険又は重大な経済危機の関連で、特別な理由により必要とされると認める場合には、第一文の例外を規定することができる。
本条第一項は、刑罰その他の刑事制裁に関し、事後法禁止を定めている。同種の規定は日本国憲法にも存在する。特徴的なのは、第二項で税や公課に関しても、事後法禁止が明確にされていることである。税金に関心の高いスウェーデンならではのことである。
ただし、税・公課に関しては例外も多く、特別の理由により政府または議会委員会が提案していた場合は、事後法を認めるほか、戦争やそれに準じる危機に際して、事後法の例外を規定することも認める。スウェーデンの実用主義的な一面が現れている。
【第一一条】
1 裁判所は、すでになされた行為について、及びある一定の紛争又はその他ある一定の目的について創設されてはならない。
2 訴訟手続は、法に従い、合理的な時間内に実施されなければならない。裁判所における審理は、公開とする。
本条第一項は特別裁判所の禁止を定める。第二項は裁判遅延の禁止と公開原則を定める。日本国憲法のように、「迅速な裁判」という表現を用いず、「合理的な期間内」という現実的な基準にとどめるのも、裁判が拙速に走らないための実際的な工夫と言える。