第六編 連邦構成共和国における国家権力および行政の諸機関の構成の諸原則
長いタイトルの編であるが、前編が連邦の中央統治機構に関する編だったのに対し、本編はソ連を構成する共和国とそこに内包される自治共和国、さらに地方の統治機構に関する編である。
第十七章 連邦構成共和国の国家権力および行政の最高諸機関
本章は、ソ連を構成する共和国の統治機構に関する規定である。言わば、ソ連邦レベルの統治機構の縮小版である。
【第百三十七条】
1 連邦構成共和国の国家権力の最高機関は、連邦構成共和国最高会議である。
2 連邦構成共和国最高会議は、ソ連憲法および連邦構成共和国憲法により連邦構成共和国の管轄に属するすべての問題を解決する権限をもつ。
3 連邦構成共和国憲法の採択および改正、連邦構成共和国の経済的、社会的発展国家計画、国家予算およびそれらの執行報告の承認ならびに自分にたいし報告義務をもつ機関の設置は、連邦構成共和国最高会議だけが行なう。
4 連邦構成共和国の法律は、連邦構成共和国最高会議により、または連邦構成共和国最高会議の決定により実施される人民投票(レファレンダム)により、採択される。
構成共和国にあっても、全権統括機関としての最高会議が設置され、ソ連最高会議と同様、共和国の権限に属する事項全般を掌握していたが、実際は構成共和国レベルの共産党指導部に実権があった。
【第百三十八条】
連邦構成共和国最高会議は、連邦構成共和国最高会議の常時活動する機関であり、その全活動について連邦構成共和国最高会議にたいして報告義務をもつ最高会議幹部会を選挙する。連邦構成共和国最高会議幹部会の構成および機関は、連邦構成共和国憲法が定める。
構成共和国最高会議にも常設機関としての幹部会が設置されたが、その組織構成は構成共和国憲法に委ねられていた。
【第百三十九条】
1 連邦構成共和国最高会議は、連邦構成共和国大臣会議、すなわち連邦構成共和国の国家権力の最高の執行処分機関である連邦構成共和国政府を組織する。
2 連邦構成共和国大臣会議は、連邦構成共和国最高会議にたいして責任をおい、報告義務をもち、最高会議の会期と会期のあいだは、連邦構成共和国最高会議幹部会にたいして責任をおい、報告義務をもつ。
構成共和国にも内閣に相当する大臣会議が設置された。ソ連大臣会議の構成共和国版である。以下の条項もソ連大臣会議の規定にほぼ準じているため、個別の評注は割愛する。
【第百四十条】
連邦構成共和国大臣会議は、ソ連および連邦構成共和国の法令ならびにソ連大臣会議の決定および処分にもとづき、またはこれらを執行するために決定および処分を公布し、その執行を組織し、点検する。
【第百四十一条】
連邦構成共和国大臣会議は、自治共和国大臣会議の決定および処分の執行を停止し、地方、州、市(共和国直轄市)の人民代議員ソヴィエトおよび自治州人民代議員ソヴィエト執行委員会の決定および処分を取消し、州の区画をもたない連邦構成共和国においては、地区およびそれに相当する市の人民代議員ソヴィエト執行委員会の決定および処分を取消す権利をもつ。
【第百四十二条】
1 連邦構成共和国大臣会議は、連邦構成共和国の連邦的・共和国的および共和国的な省および国家委員会ならびに自分に管轄に属するその他の機関を統合し、指揮する。
2 連邦構成共和国の連邦的・共和国的な省および国家委員会は、自分にゆだねられた管理部門を指導し、または部門間の管理を行ない、連邦構成共和国大臣会議および該当する連邦的・共和国的なソ連の省またはソ連の国家委員会の両者に従属する。
3 共和国的な省および国家委員会は、自分にゆだねられた管理部門を指導し、または部門間の管理を行ない、連邦構成共和国大臣会議に従属する。
第十八章 自治共和国の国家権力および行政の最高諸機関
本章は、構成共和国に内包される自治共和国の統治機構に関する章である。これも連邦及び構成共和国のそれに準じるため、個別の評注は割愛するが、もともと自治共和国の自治権は制約されていたため、規定は二か条にどとまる。
【第百四十条】
1 自治共和国の国家権力の最高機関は、自治共和国最高会議である。
2 自治共和国憲法の採択および改正、自治共和国の経済的、社会的発展国家計画および国家予算の承認ならびに自分にたいし報告義務をもつ機関の設置は、自治共和国最高会議だけが行なう。
3 自治共和国の法律は、自治共和国最高会議が採択する。
【第百四一条】
自治共和国最高会議は、自治共和国最高会議幹部会を選挙し、自治共和国大臣会議すなわち自治共和国政府を組織する。