ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

年頭雑感2015

2015-01-01 | 年頭雑感

昨年の漢字に選ばれたのは、「税」であった。「税」が選ばれたのは、言うまでもなく消費増税に絡めてのことである。消費税は現代資本主義国家においてはよくある間接税であり、増税派が引き合いに出すように、欧州では20パーセント前後の税率は常識となっている。

ただ、欧州型消費税は正式には付加価値税と呼ばれ、商品の付加価値に課税するという仕組みが明確であり、納税義務者も末端消費者ではなく、付加価値を生み出す事業者(資本家)である。厳密には一致しないが、マルクス的に言えば資本家が賃労働者を使って生みだす剰余価値に課税する雇用者税の一種となっている。そのため、広く薄く課税するのではなく、付加価値が低い品目では税率軽減ないし非課税とされる。

しかし、日本では付加価値税と呼ばず、端的に消費税と呼ぶのは、納税義務者ではない末端消費者が商品を購入するつど一律に負担するまさしく消費行為にかかる税となっているからである。末端消費者の多くは一般労働者であり、商品の購入費は賃金を原資とすることが多いことを考えると、日本の消費税は理論上間接税でありながら、所得税とは別途、賃金から徴収する直接税的な機能を持っていることになる。

この点で、日本型消費税と欧州型付加価値税は、原理的な同一性にもかかわらず、異質の税制とみなしてよいであろう。日本型消費税は大衆からの収奪的性格が強いのに対し、欧州型付加価値税は資本に対する抑制的な性格が強い。

ただし、欧州型でも事業者の価格転嫁により、商品の価格が高騰し、欧州は全般に物価高となりやすく、低所得層の暮らしは厳しいものとなる。消費のつど収奪されても、比較的物価が抑えられている日本のほうがまだ暮らしやすいという側面もあろう(反面、零細事業者の価格転嫁が困難)。

とはいえ、賃金抑制の時代の消費増税は暮らしを直撃する。それでも、増税政権が選挙で勝利した。しかし、投票率は戦後最低の約50パーセント、つまり半数の有権者が集団的に棄権した。政権の宣伝機関と化したマス・メディアはその事実から目を背け、「圧勝」という見かけの数字だけ強調するが、戦後最大規模の棄権には政治的に象徴的な意味があるのだ。

さて、日本国内では「税」がキーワードとなった昨年であるが、世界ではおそらく「戦」であろう。シリア、イラク、リビア、ウクライナなどの「戦」はすべて今年に持ち越しである。そして、今年も目覚しい進展は望めまい。

世界が金儲けに狂奔し、マネーゲーム以外のことには二次的以下の関心しか抱かなくなっている。遠い国の「戦」より目先の「金」。そういう意味では、世界のキーワードは「金」かもしれない。悲観的ながら、2015年もそんな年となるだろう。

コメント