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共産教育論(連載第41回)

2019-03-12 | 〆共産教育論

Ⅶ 専門教育制度

(7)教育学院/社会学院
 教育学院は、その名のとおり、教育専門家の養成を任務とする高度専門職学院である。教育専門家の代表例がいわゆる教員であることは共産主義社会でも同様であるが、共産主義社会の教育は原則的に通信制を基本とした一貫制基礎教育課程であることは、まさに当連載で記したとおりである。
 その結果として、教員の役割・性格が伝統的な学校教員のそれとは大きく異なることになる。すなわち、より個別教育型かつ科目担当制となるうえに、小中高のような学校種別ごとの教員免許制ではなくなり、一貫した単一の教育免許制となる。
 しかも、障碍児統合教育のため、一般教員も障碍児教育の知見と素養を要するため、障碍児教育専門の教員免許が存在するわけではないが、重度障碍児の療育の従事するためには、教員免許に加えて、一定の認定資格を要する。
 また、基礎教育課程に必修で職業導入教育が取り入れられることから、職業導入教育専任教員の免許が創設される。職業導入教育専任教員にはカウンセラーとしての素養と技能も要するため、通常の教員とは別立ての養成が必要となる。
 さらに、保育が義務化され、基礎教育課程の前段階としての性格が強まることに対応し、保育専門家としての保育師も、教育学院において養成される高度専門職に昇格する。
 一方、社会学院は、社会学の実践に従事する専門家の養成を任務とする高度専門職学院である。社会学そのものは学術研究センターでの研究分野の一つであるが、社会学実践家の代表例は社会事業調整士である。
 社会事業調整士とは英語圏で言うソーシャルワーカー(social worker)の共産版と呼ぶべき専門職であり、社会内にあって社会的保護を必要とするあらゆる市民に対して、必要かつ有益な社会サービスの受給に結びつけるための調整活動を行なう専門家である。
 資本主義社会におけるソーシャルワーカーは政府や役場との連絡役程度の役割に限局されがちなのに対し、共産主義社会は政府や役場に相当する機構を擁しないため、いわゆる社会福祉も民間で自主的に行なう必要があるが、社会事業調整士は社会学の素養に基づき、そうした民間での自主的福祉活動の中心を担う専門職として重要性を増すのである。
 社会学院で養成される専門職として、今一つ重要なのは児童福祉士である。これはその名のとおり、児童の福祉的保護を専門とする児童専門のソーシャルワーカーに等しいものである。児童福祉士は主に未成年者福祉センターに配置されて、保護者からの相談業務を含む児童の福祉に関する包括的な業務に当たる。

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