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共産教育論(連載第42回)

2019-03-13 | 〆共産教育論

Ⅶ 専門教育制度

(8)芸術学院/体育学院
 総説の箇所でも記したとおり、高度専門職学院は、一定の職業経験を持つ人を対象とする生涯教育の一環としての専門教育に属する教育課程であるところ、わずかな例外として、音楽・美術等のアーティストを養成する芸術学院や各種スポーツ競技を専業とするアスリートを養成する体育学院がある。
 こうした分野は、その性質上早期教育が不可欠なため、これらの専門職学院は職業経験を募集条件とはせず、基礎教育課程修了者であれば、職業経験を問わず入学可能とされる。その意味では、この類型の専門職学院は生涯教育の体系からは外れることになる。
 もっとも、芸術やスポーツは生来の適性や才能によるところが大きいため、必ずしも専門職学院の修了は成功の絶対条件ではない。むしろ、個人の指導者が運営する教室やクラブのほうが多くの優れたアーティストやアスリートを輩出する可能性すらある。
 こうした民間の指導組織は次章で見る正規教育体系の外部にある課外教育体系の一環として、正規教育制度とも並存するものであり、芸術・スポーツ分野ではむしろこうした課外教育体系こそが中核的となるかもしれない。 
 その点、旧ソ連を盟主とする冷戦時代の東側陣営がしばしば推進していたように、芸術家や五輪アスリートの特権エリート養成を通じて西側に対する文化的優位性をアピールする「国威発揚」政策は、真の共産主義社会の採る道ではない。
 真の共産主義はそうした文化宣伝政策とは無縁であり、共産主義的専門教育としての芸術学院/体育学院といえども、それらは専門教育制度の特種的な一環にすぎず、特権エリート養成機関としての特別な地位が与えられるわけではないことに留意されなければならない。
 ちなみに、芸術学院/体育学院は、芸術や体育の認定指導者を養成する課程も併設するが、これらは例えば第一線を退いたアーティストやアスリートがその職業経験を後進の指導に活かすための生涯教育としての意義を持つ。その限りでは、芸術学院/体育学院も生涯教育機関としての性格を帯びていると言える。

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