ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産教育論(連載第44回)

2019-03-26 | 〆共産教育論

Ⅷ 課外教育体系

(2)スポーツクラブ  
 既存の学校制度においては、課外活動として各種のスポーツクラブ活動が展開されることが多い。このような学校スポーツ活動の存在とその比重は諸国によって様々であるが、資本主義社会は多くの営利的競技団を擁しながら、運営にコストのかかるスポーツ選手の育成の多くを学校スポーツ活動に負わせようとする傾向が見られる。結果として、スポーツの価値が学校教育で過大評価されがちである。  
 しかし、原則的に通信制で提供される共産主義社会の基礎教育課程には課外活動としてのスポーツクラブ活動も存在しない。基礎教育課程の必修科目である健康体育も、その項で述べたとおり、健康の維持増進を目的とした運動に焦点を当てたもので、個別の競技は扱わないのであった。  
 共産主義社会において個別の競技の技能を修得する競技体育に相当するものは、全面的に個人の関心と適性に基づき、純粋に課外教育体系に委ねられることになる。その点では、次項で見る私的学習組織と同様の扱いとなるが、純然たる趣味の習い事とは異なり、職業的なスポーツ選手の育成に関しては、相応の育成課程が用意されるであろう。
 その代表的なものとして、各種の職業競技団が直営する選手育成プログラムが想定される。これは競技団直営のスポーツクラブのようなもので、こうしたクラブの設立・運営に関しては特段の規制もない一方、それらは正規の教育機関として認可されるものでもなく、完全に私塾的な扱いとなる。  
 またアマチュアの各種競技団体が、アマチュア選手の育成プログラムを擁し、直営のスポーツクラブを設立・運営することも自由であるが、それらももちろん正規の教育機関とは別立てである。  
 このような運動系スポーツクラブ活動の他にも、将棋・囲碁・チェスなどのボードゲームやコンピューター・ゲームのような知的競技の選手を育成するクラブの設立さえも盛行するであろうが、いずれにしても、これらは私的な課外教育体系の一環であるから、基礎教育課程の施行や前回見た地域少年団活動の実施に抵触しない範囲内で、個人によって補充的に行なわれるものであることが留意される。

コメント

共産教育論(連載第43回)

2019-03-26 | 〆共産教育論

Ⅷ 課外教育体系

(1)地域少年団活動
 共産教育はその多くを公教育が占めているが、公教育を含めた法令に基づく正規の教育体系に含まれない教育をここでは広く課外教育体系と呼ぶことにする。従って、課外教育体系は公的な課外教育と純粋に私的な課外教育の両方にまたがることになる。
 そのうち公的な課外教育の中心となるのは、地域少年団活動である。すでに述べたように、義務教育に相当する13か年の基礎教育課程は原則的に通信制によって実施され、校舎を持った学校で子どもが集団生活を強いられることはない。
 その点で、基礎教育課程は相当に個別教育化される。これは共産主義社会の市民として共有すべき基礎的素養を身につける点では効果的であるが、反面として、基礎教育課程は社会性を備えた人間の育成には限界がある。そこでよりインフォーマルな教育として地域をベースとした「地域少年団」が導入される。
 具体的には最も重要な社会性育成期の満7歳から15歳までの子どもたちを対象に、地域で年齢混合・男女混合の少年団を編成し、訓練を受けた指導員の下、週末や祝日を利用して、月2回の割合で行う野外活動である(夏季休暇には宿泊を伴う活動もある)。
 その目的は、社会性の本格的な発達が促進されるべき年代の子どもたちを対象に、基礎教育課程では限界のある社会性教育を施すところにあるからして、該当年齢の子どもたちは、医学的な理由から参加が困難な場合を除き、全員参加を義務付けられる。
 医学的に参加可能な条件を満たす限り、障碍児も参加するため、その限りでは反差別教育の一環としての交流学習の意義も持つ。同時に、活動内容は教科学習やスポーツのような技芸でもなく、自然観察などを通じて自然環境の中で自由に遊ぶ形式で、インフォーマルながら環境教育を兼ねたものとなる。
 その実施主体は、中間自治体としての地域圏のレベルで担われる基礎教育課程とは異なり、市町村である。市町村では地区ごとに少年団を編成し、指導員を養成・配置する。少年団指導員は適性審査に合格し、全土一律の講習を修了した成人に限られる。

コメント