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共産論(連載第48回)

2019-06-18 | 〆共産論[増訂版]

第8章 新しい革命運動

(3)共産党とは別様に

◇革命運動体としての民衆会議
 共産主義革命と言えば、その名のとおり共産党を中心に実行されるものと考えるのが従来の通念であったが、もはやそうではない。ここで提示される民衆による共産主義革命とは共産党はおろか、およそ政党組織によらない、言わば無党派民衆による直接革命なのである。
 といっても、いかなる組織化もせずに革命事業を完遂できると主張するほど筆者もシンプル(純真)ではない。革命運動の組織化はやはり不可避である。その組織とは?
 民衆会議―。この概念はすでに登場済みである。そこでは国家が廃止される共産主義社会における新しい統治機構として登場したのであったが、この民衆会議は同時に、革命前には革命運動組織として結成・展開されるという一貫性を持つのである。
 この「革命前民衆会議」とは、革命後には公式の統治機構となることが予定された―言わば「さなぎ」のような―組織である。その革命後における民衆会議の構制についてはすでに第4章で先取りしておいたので、ここでは革命前民衆会議について見ていく。

◇革命前民衆会議の概要①―世界民衆会議  
 貨幣経済と国家体制を廃する共産主義革命は一国だけで実践できるものではなく、各国における連続革命を経て最終的にトランスナショナルかつグローバルな世界共同体の創設にまで到達しなければならない。
 そのためには民衆会議はその初めの一歩から、現存する国家を超えた世界主義的な組織化を進める必要がある。すなわち「世界民衆会議」の結成である。世界民衆会議は将来世界共同体が創設された暁にはその総会として機能することが予定される民衆会議運動の世界センターである。  
 ただ、世界センターといっても、世界民衆会議と各国民衆会議との関係は本部‐支部の上下関係ではなく、各国における民衆会議の結成支援と各国民衆会議の活動に対する助言・支援、さらに各国民衆会議間の情報交換・情勢分析を柱とするフォーラムの位置づけとなる。  
 それと並行して、第4章でも触れた連関する大地域=汎域圏レベルでの民衆会議作りも重要である。これは最終章で改めて述べる五つの汎域圏ごとに結成され、将来は世界共同体の執行機関として機能する「汎域圏代表者会議」を構成する5人の代表者を選出する代議機関となるのであるが、それまでの間は将来汎域圏を構成する大地域に属する各国民衆会議の暫定的な協議会の役割を果たす。  
 特に国内的に民衆会議のような組織が弾圧・迫害の標的となるために国内活動が困難である諸国における亡命民衆会議の支援は、この汎域圏民衆会議の重要な任務である。従って、汎域圏民衆会議は民衆会議の活動が―全くのノーリスクでは済まないとしても―比較的自由に展開できる国に暫定的な拠点を置くことになるだろう。

◇革命前民衆会議の概要②―各国民衆会議  
 連続革命により世界共同体が創設された暁には主権国家は揚棄されるが、革命前にはさしあたり現存する一国ごとに、世界民衆会議と連携する民衆会議が組織されなければならない。  
 その際、上述した一貫制という性格に照らして、各国民衆会議の組織は結成の段階から革命後の展開に合わせて市町村、地域圏、地方圏(連邦国家の場合は準領域圏)―地域圏や地方圏に相応する自治体が革命前に未設置の場合は暫定的な区割りによる―、領域圏の各レベルごとに重層的に立ち上げていく。  
 しかし、ここでも領域圏民衆会議とローカルな各圏域民衆会議の関係は上下関係になく、領域圏民衆会議に中央委員会のような集権的指導機関は置かない。その代わりにローカルなネットワークをつなぐ機関として「中央連絡委員会」(連邦国家の場合は「連合連絡委員会」)を置くが、首都中心の運営を避けるため、同委員会は首都以外の都市に置く。  
 中央連絡委員会はそれ自身の定例会を定期的に開くほか、年一回の総会(民衆会議総会)を企画・主催する。しかし、総会は情報交換と情勢分析の場であり、政党の大会のように拘束力のある決議は行わない。  
 他方、地方圏(準領域圏)民衆会議と地域圏民衆会議にも「連絡委員会」を置き、各々の圏内民衆会議との連絡機関とする。また市町村民衆会議にも小規模な「連絡会」を置き、市町村内の組織化とともに、地域圏民衆会議とのパイプの役割を持たせる。  
 このように民衆会議は共産党とは異なり、中央指導部を持たず―従って、中央連絡委員会に委員長やそれに匹敵する書記長等々の筆頭職は置かない―、世界民衆会議を核として、各国民衆会議及びその内部のローカルな各圏域民衆会議が有機的に連携する分散的なネットワーク型組織として運営されていく。

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