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年頭雑感2023

2023-01-01 | 年頭雑感

昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻を主たる契機に、先の第一次冷戦が終結して三十余年ぶりに地球の東西が分断される第二次冷戦が開始された。その意味で、2022年は21世紀最初の四半世紀における画期点であったと言える。

これに伴い、第一次冷戦当時とは異なり、すでにグローバル規模に拡大していた資本主義にも打撃が加わり、パンデミックによる混乱からの回復基調を吹き飛ばすグローバルなインフレーションを惹起した。結果として、生活難も世界規模で拡大し、生活経済は破綻状態である。

他方、地球環境はパンデミックによる一時的な生産の総停止状態からの反動で、かえって急激な回復生産に向かったことにより悪化し、環境破壊は猛暑と大寒波という極端な寒暖差を伴う異常気象現象を症状とする慢性進行疾患のように固定化されている。それに伴う環境難民も増加していくだろう。

資本主義―その本質である貨幣経済―は、生活経済及び環境経済という視座から見る限り、すでに終わっている。そして、現今のグローバル規模での生活破綻や環境破壊には、主権国家という矮小かつ排他的な政治単位ではもはや対処できない。

その点に関連して、筆者は2018年の本欄で、「長期的には56パーセントの確率をもって人類は(主権国家を持たない)共産主義社会の建設に向かうと予測する。」と記したが、現状に鑑みると、この革命発生予測確率を5ポイント上昇させて、61パーセントに引き上げておきたい。

とはいえ、現状、資本主義と主権国家という二つのキー概念は、世界の大半の人々にとって、単なるイデオロギーを超えた無意識レベルに埋め込まれてしまっており、その転覆を思考すること自体を妨げていることは否定できない。資本(貨幣)と国家(権力)は、言わば強力な麻酔に匹敵する。

革命とは言うまでもなく自然現象ではなく、人間の意志的かつ集団的な行動であるから、意識の覚醒と覚悟とを必要とする。現状はそうした革命の主意的な条件を欠いているため、如上61パーセントは名目確率であり、実質確率はまだ50パーセントに満たないだろう。

資本(貨幣)と国家(権力)という二つの強力な麻酔から覚めるためには、単なる啓発とか啓蒙といった表層レベルの対応では足りず、生物的進化のレベルで、生物としての人類のさらなる進化を促進することが必要かもしれない。

そうした意味では、資本と国家にとらわれ、堂々巡りの思考に終始する現生人類の大半は生物的進化が止まった旧人類と呼ばざるを得ない。それに対して、いち早く資本と国家の麻酔から覚める人々は新人類と呼ぶに値するだろう。

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