第3部 持続可能的計画経済への移行過程
第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間
(4)経済計画会議及び各種企業体の設立
経済移行計画の初動期間には、初めの一歩となる第一次3か年計画を策定・施行するうえで不可欠な制度である経済計画会議の創設及び経済計画の主体となる企業体(計画企業体)の設立がなされる。
これは、経過期間において設立されていたそれぞれの準備組織が正式の組織として立ち上げられることを意味している。計画企業体としては、経済計画の主体でもある各種の生産事業機構や消費事業組合が正式に発足する。
同時に、計画対象外の自由生産を担う生産事業法人や生産協同組合、協同労働グループといった新しい自由生産企業体(拙稿)の設立も、初動期間に集中的に行われる。
その点、資本主義経済体制下では多くの民営企業体が株式会社形態を取っているところ、貨幣経済の廃止を前提とする持続可能的計画経済体制下ではそもそも株式による資金調達という営為がなくなるので、株式会社や株式市場の存在余地はない。そこで、株式会社(その他の営利企業形態も同様)は上掲三種の企業形態のいずれかに一斉転換されることになる。
もっとも、まだ貨幣経済が残存している経過期間にあっては株式会社形態も存置されているが、各企業の判断による経過期間中の企業形態の変更も可能となるよう経過措置法を用意することが望ましい。
(5)第一次3か年計画の始動
経済移行計画における初動期間の最終段階は、第一次3か年計画の始動である。これはまさに持続可能的計画経済における初めの一歩であり、その成否が計画経済全般の成否を分けることになる重要な第一歩である。
ただし、先述したように、初動段階では貨幣による対外貿易が残存していることが想定されるため、第一次3か年計画にはそうした貿易計画も盛り込まれる点で、経済移行計画が終了する完成期における経済計画とは異なる特質がある。
その意味で、第一次3か年計画はまだ経過期間の要素を残した過渡的な内容となり、海外情勢によっては、第二次以降の後続3か年計画でもなお貿易計画が残存する可能性もあるであろう。
いずれにせよ、第一次3か年計画は初動期間の集大成であるとともに、持続可能的経済計画の完成期へ向けた推進力となる起点でもあり、同時に後続経済計画の先例ともなるため、慎重かつ精緻に策定する必要がある。