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続・持続可能的計画経済論(連載第42回)

2023-01-02 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間

(1)初動期間の概要
 第7章で見た経済移行計画の実施プロセスにおける経過期間を過ぎると初動期間に入るが、初動期間はまさに持続可能的計画経済の開始段階に当たる。ここでの中心的なイベント(出来事)は第一次経済3か年計画の始動である。
 その前提として、持続可能的経済計画の核心でもある貨幣制度の廃止も大きなイベントであり、結局、貨幣制度の廃止及び第一次3か年計画の始動の二つが初動期間における二大イベントとなる。
 初動期間は周到に計画された経過期間における種々の準備行為に基づいて展開されるため、相当量の複雑な移行作業を要する経過期間に比べて単純であり、如上二大イベントに集約され、初動に伴う混乱も最小限度に抑えられる。


(2)貨幣制度廃止①:金融清算法人と金融清算本部
 初動期間におけるイベントの中でも重大なものは、貨幣制度の廃止である。ここで言う貨幣とは国家が発行する通貨を指す。よって、正確には通貨制度の廃止である。後に改めて言及するように、私的団体が発行する私的通貨はここでの廃止対象に含まない。
 通貨制度及び通貨による交換経済の廃止はほとんど文明史的な転換を意味するため、経過期間においては経済混乱を避けるためにもなお基本的に存置されているが、初動期間においてはその全廃が目指される。
 その点、全世界に及んでいる通貨制度を混乱なく全廃するには、条約に基づき全世界一斉に実施することが望ましいが、それは理想型ではあれ、実現は至難であるので、ここでは個別的な領域圏ごとの法令に基づいて行うケースを想定する。
 通貨制度廃止法令は公布即施行され、それに基づき既存通貨は将来に向けて失効する(遡及しない)。ただし、外貨は別であり、外貨については当該外貨を発行する外国政府(または領域圏)が通貨を廃止するまでは有効である。
 通貨制度の廃止とは既存の金融システムの清算作業であるから、そうした作業の主導機関は中央銀行がふさわしい。中央銀行は近代的な貨幣経済にあっては通貨制度の番人であるとともに、通貨制度の清算人ともなり得るからである。
 具体的には、法令に基づき市中銀行及びその他全種別の金融機関の清算法人を立ち上げたうえで、それらを中央銀行内に設置された金融清算本部に包括的に接収し、全金融口座を整理する。
 これらの清算口座内の預金はすべて中央銀行の管理下で封鎖・無効化されるが、上述したとおり、領域圏ごとに通貨制度を廃止する場合、いまだ通貨制度を維持する諸国の外国人(法人を含む)名義の口座については引き出し・返還の手続きを進める必要がある。
 中央銀行は通貨制度廃止の全プロセスを見届けたうえ、最終的に自らも清算・廃止されることになるが、金融清算本部は分離され単立機関となった後、通貨制度廃止後の残務処理機関としてしばらく存置される。
 なお、金融機関に預金されていないいわゆるタンス預金のような手元貨幣も通貨廃止法令に基づき失効するため、改めて供出を求めたり、押収したりする必要はなく、現在における古銭と同様に古物化し、所持者の私的所有に帰することになる。

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