第3部 持続可能的計画経済への移行過程
第9章 経済移行計画Ⅲ:完成期
経済移行計画の最終段階は、完成期である。これは持続可能的計画経済のシステムが確立された段階を意味するが、問題は何をもって完成したとみなすかである。
理論上の完成期とは先に『持続可能的計画経済論』で示したような諸制度がすべて出そろい、第二次以降の各次経済計画が動き出した段階であるが、より総括的に、システムが確立されたと言い得る最低必要条件を示すと、次のようになる。
(イ)世界経済計画の確立
そもそも持続可能的計画経済における「持続可能」とは地球環境の持続可能性を意味しているから、持続可能的計画経済の完成型は世界共同体経済計画機関を軸とする全世界レベルでの経済計画システムである。
そのため、国際連合に代わる新たな民際統治機構となる世界共同体(世共)の創設及びその専門機関としての世共経済計画機関の設立が完成の前提条件である。そのうえで、世共経済計画機関が策定する世界経済計画に基づいた各領域圏ベースの各次経済計画が運用されるようになって初めて完成型となる。
(ロ)純粋自発労働制の確立
持続可能的計画経済の本旨は貨幣経済によらない生産と労働にあるから、無償の純粋自発労働制が確立される必要がある。これは貨幣制度が廃止される初動期間から開始されることであるが、確立までには一定の時間を要するであろう。
その過程で、市場経済下では賃金制に支えられて初めて成り立っていたいくつかの職種がある種の淘汰を受け、消滅する可能性がある。その補充として、適性に基づく職業配分制の導入、ロボットやAIによる自動化の推進、それらが困難な場合は当該職種を当面は市民全員の義務労働とするなどの対策が必要になる。
(ハ)無償供給制の確立
賃金労働が廃され、労働と生活が分離される持続可能的計画経済下で日常生活を支える物資及びサービスの無償供給制が確立される必要がある。これも初動期間から運用が開始されているが、初動では物資不足や流通不全などの欠陥が発現する可能性がある。完成期には、そうした欠陥の修正がなされ、無償供給制が円滑なシステムとして運用される状態が確立されていなければならない。
それまでは無償供給制の外部で行われる物々交換による自由供給慣習で補充される可能性があるが、持続可能的計画経済はこうした慣習を違法な「闇経済」とはみなさず、完成期においても合法的な自由交換経済として並行的な存続が認められる。