今から約6年前の2010年の11月に購入した6AS7の真空管アンプですが、実際に鳴らしてみると、あまり良い音しないなと感じていました。
しかし、良い音がする素質は秘めているだろうから、購入した事を後悔しないで、思い出しては少々手を加えたりして改良を図ってきました。
それにも拘わらず、一向に自分の満足の行く音を奏でてくれないので、しばらくは放置していました。
日本に戻ってきからも、一度も箱を開けることもなく、2年間は箱入りのままでした。
その間、6C33Cのキットも組み立てたりして。
しかし、何とかならないものかと、今年の春頃から、EDさんに相談したりして構想を練って来ましたが、やっと先日の土曜日から再開腹手術に踏み切りました。
そして本日、とうとう手術が完了して、素晴らしい音を聴かせてくれる様になりましたので、今回私が施した改善内容を報告します。
どれも、真空管アンプの原則、基本的な事ばかりですので、真空管アンプを組み立てる上で参考になればと思います。
真空管アンプのプロの方には釈迦に説法で、「そんな事は当たり前でしょう。」とお恥ずかしいですが。。。
<聴感上の問題点の整理>
・ハムノイズが大きい(ブー、ジーというノイズ)
・左右の分離が悪い。音の広がりが無い。
・低域が出ない
・歪が大きい様な気がする
<実施したこと>
1. アース周りの配線見直し
①交流ヒーターのアース
このアンプのヒーターは、交流ヒーターを使っています。
出力管のヒーターの片側はシャーシーのグランドに落とされていましたが、
初段管、ドライブ管のヒーターの片側はグランドに落とされていませんでした。
そこで、すべて球のヒーターの片側をグランドに落とすようにしました。
②1点アース ~アース・ポイントの見直し~
アースのポイントを見直しました。
改良前は、グランドがシャーシの至る所でアースに落とされていました。
これを真空管アンプの原則、基本に従って、一点アースになるようにしました。
1点アースのポイントとした場所は、初段入力管に近い所=信号入力のグランドとしました。
a. B電源のグランド
子基板上にB電源の電解コンデンサが載っていますが、このグランドを1点アース・ポイントに太い線で接続。
b. カソード抵抗のグランド
出力管6AS7のカソード抵抗のグランド側を先ほどのB電源のグランドへ接続。
C. ヒーターのグランド
・電圧増幅段のグランド--ヒーターの片側を纏めて1点アース・ポイントへ接続。
・出力管のグランド--こちらもヒーターの片側を1点アース・ポイントへ接続。
d. スピーカー端子のグランド
これも、左右それぞれ1点アース・ポイントへ接続。
全体の配線は、こんな感じになりました。
1点アース・ポイントは、、ラグ端子(圧着端子)でしっかりと固定。このポイントの1点だけが、シャーシに落ちています。
他では落ちていません。
(※この写真で、金色の円筒はOdio Cap製のカップリング・コンデンサです。オリジナルから交換。)
上のB電源子基板の写真をよく見て貰えば、分かりますが、もともとは基板裏面のパターン上でアースに落ちる様になっていたので、それをプラスチックねじと絶縁ワッシャーを使って、シャーシから浮かせています。
③入力ケーブルのグランド分離
もともとは、入力信号のグランドは、RCAピンから入って直ぐに、受け基板上でLRのグランドがショートされていました。
このグランドを分離して、ボリュームのところで共通化、ショートする様にしました。
全体の写真を見てもらうと、ボリュームまで引き回している事がわかります。
シールド線には、手持ちのベルデン1503Aを使いました。
④3端子ACプラグのグランドを浮かす。
AC電源プラグは3端子になっていますが、このグランド端子がシャーシに落としてあるために、コンセントを通して、他の機器のグランドと接続されるために、廻り回ってRCAプラグのグランド端子がショートされてしまう。
これでは、RCA入力のグランドを分離した意味が無いので、このACグランドを浮かした。
これによって、ハム・ノイズも減少。(全体写真のB電源子基板の右側のラグ端子)
2. その他
デカップリング用電解コンデンサに並列に抵抗追加
これは、電源の安定化と電解コンデンサの放電のために追加しました。
<結果>
改良前のハム・ノイズは、20mVくらい有りましたが、改良後は2mV以下と10分の1に減りました。
聴感上では、ノイズは聞こえません。ボリュームも回してもノイズはあまり大きくなりません。
自分で言うのも手前味噌ですが、素晴らしい改善です!。驚きの改善です!
アースの見直しで、こんなにも変わりました。
そして、音質ですが、素晴らしいです!!!。 低域から広域まで良く伸びています。
音の広がり、空気感、立体感も素晴らしいです!!!。 手持ちの他のアンプ、どれよりも良いかも知れません。
この6AS7と言う球は、本来は双3極管の整流管でドライブが難しい事で有名なので、以前の改造でパラ・プッシュプルからシングル・プッシュプルにしているのですが、ドライブ能力の無さとか全く感じません。また、シングルでも、私のスピーカーJBLのL26を充分に鳴らしてくれます。
カソード電流は、50mAに調整しています。
そして、この機会にもう一度、以前展開した回路図と実配線を確認したところ、重大な間違いに気が付きました。
なんと、ドライブ管は12AX7ではなく、E88CCでした。12AX7は初段管でした。(EDさん、困惑させて申し訳ありませんでした。)
ドライブ管がE88CCならば、折角なので、手持ちのテレフンケンECC88を奮発してみました。ダイヤ付きです。
これは、1本でウン万円するので、取り扱いに神経を使います。印字を消さないように、ピンを曲げたりしないようにと。
<今回学んだ事>
真空管アンプは、原理原則、鉄則、基本通りに配線する事。
今回の改良に際して、今迄EDさんに教えて頂いた事、また、6C33Cのキット組み立てを通して学んだ事、今迄様々な改造を通して経験を積んできたことが役に立ち、素晴らしいアンプに仕上げる事が出来ました。
改良完成したアンプを正面から見ると、こんな感じです。ピアノ・ブラックがとても綺麗です。
メーカー名は、メーカーのプライドもあるので、伏せておきます。(中華圏製です。)
参考までに使用真空管は以下です。
初段管:12AX7
ドライブ管:E88CC (差動増幅)
出力管:6AS7 (シングル・プッシュプル) 中央よりの2本はダミーで載せています。今はRCA製を載せています。
交流ヒーター
NF有り
この製品の過去の改造履歴は、こちら。