年初の「今年の計画」で予告した様に、5998 PP アンプの改良がほぼ完了しましたので、その経緯や顛末について書きます。内容が多く、また出来るだけ詳しく書き残したいので、何回かに分けて投稿します。
まずは、出力トランス(OPT)の交換について。
このアンプのオリジナル仕様は6AS7G パラレル・プッシュプル(球4本)でした。その後単純なプッシュプル(球2本)に改造、さらに出力管をTung sol 5998に変更したのですが、出力トランスはそのまま使用していました。
真空管アンプを設計される方には、「そんなの負荷インピーダンスが合わなくなるだろ!」と笑われてしまいます。
どの様な状況だったかと言うと、実測から求めた1次側インピーダンスでロード・ラインを引くと、直線がかなり立ち、僅かな信号振幅でも球の許容プレート損失13Wを超えてしまっていました。
しかし、この状態で出力を上げてもプレートが赤熱することは無かったので、「まぁ良いか」と取り敢えずバイアス電流控え目で動作させていました。それでも、やはり気になります。
そこで、しばらく適当な出力トランスを物色していました。
条件としては、
①外形---今のトランス・ケースに収まる事。
若しくはケース付きの場合は縦横高さがシャーシにシックリと収まる事。
②1次側インピーダンス---3.5kΩくらい。
出力管のrp(内部抵抗)の2~3倍が良いと本で学んだ。
5998のデータシート上で、今の設定Eb=200V,Eg=-33Vからrpは750Ω位と読み取れる。
この約2倍 x Pushpullで3.5kΩ位が適当か。
これでロードラインを引いてみると、全領域でPmax=13Wに収まります。
③出力---20~30W位の対応品。許容電流も確認。
④オリエント・コア---音が良いと言われている。
です。
LUXMANのOY15-3.6が良さそうだが、巻線が切れやすいとの評判と中古値段が高い。
そうこうしていた所、偶々オクで良さそうなのを見つけました。ネット上でもこのトランスは評判良さそう。
落札購入した出力トランスがこちらです。
<仕様>
TSM Products製
真空管アンプの趣味が高じてトランス造りをする様になったとの事。
OY15を何台も分解し利点、欠点を研究されたそうです。手巻きで造りも丁寧です。
一次側 3.5kΩ pushpull 2次側 4/8/16Ω 1次側最大電流 150mA 25W(30Hz)
このOPTは2A3用を想定して製作された様です。
2A3の内部抵抗は約800Ωなので、今回の想定とほぼ同じ。
このOPTを使った時のロードラインは、この様になりました。
これで通常聴く音量ではA級動作が出来そうです。
このトランスをアンプに載せました。
今までとは取り付け穴位置が違うので、私の苦手な穴の加工が必要になりました。
シャーシが固いのか、なかなか穴が空きません(-_-;)。ドリルのビットを新調しました。
なんとか載せて、配線をしました。2次側は8Ωへ配線。
配線材は取り敢えずダイエイ電線を使用。後にWE線に交換するかも知れません。
トランス・カバーも取り付け。ピッタリ収まりました。
さて、まずはダミーロード(8Ω)で波形を確認します。
電源を入れて暫くすると、無信号なのにオシロの波形が振り切れます!!。あれっ、やばー!!
そうです、1次側P1-P2の接続が逆だった様で正帰還が掛かり、発振してしまったのです(汗;)。
慌てて電源を切り。1次側の接続を変更しました。
気を取り直し、再び電源投入。今度は良さそうです。波形も問題無し。
Pushpullでは良くある事だそうです。
スピーカーを繋ぎ、音を聴いてみます。
フラットで低域も良く出ます。低音は締っていて全体的に力強いです。
但し、何だか金属質の音がします。これは使い始めは仕方ないです。暫くエージングが必要です。
しかし、色々なジャンルの音楽を聴き込んでも、どうしても高域が耳障りです。
特にボーカル物を聴くと、何を聴いても、ハスキー・ボイスに聴こえ、目の前の近くに口が迫って来て噛みつかれそうな感じです(笑)。これではいけません。疲れてしまい長く聴いて居れません。
ということで、次のステップへ。