( 桜桃忌・太宰治の忌日)
今日6月13日は太宰治の忌日,桜桃忌です。明治42年6月19日青森県北津軽郡
金木村(現五所川原)で生まれる。本名津島修司39年の生涯で4度の自殺未遂を
行い昭和23年6月13日玉川上水にて愛人の山崎富栄と入水心中でこの世を去る。
夜学生教へ桜桃忌に触れず 沢木欣一
他郷にてのびし髭剃る桜桃忌 寺山修司
桜桃忌よりも富栄忌徳利置く 手塚美佐
とても胸を打たれる3句です。それぞれが語りかけてくることを私感ですが
少し書いてみました。
一句目 桜桃忌には触れずと固い意思をも感じさせます。作者には太宰の文学を
崇高する気持ちが大いに有った事の裏返しだったのかも知れません。しかし
心中という結末を納得し美化することが出来なかったのでしょう。
純粋に太宰の文学を愛した人々にとって心中は余りにも俗な事だったのでしょう
二句目 この句は修司の強烈な心の暗示と捉えました
他郷は他人事、髭を剃るは修司自身の行動と置き換えて考えてみれば
太宰の行動は自分にも起こりうる日常、つまり寺山修司の死への美学も
見え隠れしているようにも、修司自身がそれを確認しているようにも感じるのです
三句目 この句は桜桃忌にたいする作者のメッセージと感じました。
俳句の世界では桜桃忌という季題を少し美化されて詠まれているようにも感じる
事がありますが,太宰の死とともに山崎富栄という一つの命も同時に失われて
いる心中という結末に、またその美化にも怒りを感じているようにも取れます
下五の「徳利置く」に作者の強い主観を感じました。
植物的には桜桃はゆすら梅の実ですが、この太宰の桜桃はさくらんぼの事です
奇しくも今日13日は大好きだった祖母の命日でもあります。