7月 22日

2020-07-21 13:52:50 | Weblog
                        芙蓉・酔芙蓉・白芙蓉  < 季=秋 >


     雲助の溜り場跡や白芙蓉            栗田やすし


     妹逝く背戸の芙蓉の桃色に           細見綾子


     白きまま雨に昏れゆく酔芙蓉          矢野孝子


     捨て難き母の三味線白芙蓉           上杉和雄


     酔芙蓉根こそぎ掘つて足場組む         伊藤範子


     山裾の日暮は早し花芙蓉            夏目悦江


     深川や樽に咲かせし酔芙蓉           関根切子


     紅芙蓉咲き裏道を明るくす           伊藤靖子


     酔芙蓉酔ひ極まりて落ちにけり         坪野洋子


     酔芙蓉夕風立ちて紅きざす           山本正枝


     ひめごとの一つや二つ酔芙蓉          岡島溢愛


     酔芙蓉まだほろ酔の塀の上           中根多子



          



     ゆめにみし人のおとろへ芙蓉咲く        久保田万太郎


     一輪のはや大酔や酔芙蓉            水原秋櫻子


     胸の手のつめたく覚めし花芙蓉         鷲谷七菜子


     満目の雲となりつつ芙蓉閉づ          福永耕二


     風はらむはずみにひらく芙蓉かな        阿波野青畝


     紅を刷く志功の天女酔芙蓉           黒川芳穂




                    
     


          
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7月 21日

2020-07-20 14:04:01 | Weblog
                       土用・土用入り・土用鰻・土用波・土用干し

          この夏の土用の18日間、土用1日目を土用太郎、2日目を土用次郎
          3日目を土用三郎などと称されて俳句にも詠まれていますが、元々は
          農耕との結びつきから出た言葉のようです。
          土用の丑の日には鰻を食べて英気を養う風習がありますが、これは
          風聞によれば平賀源内が友人の魚屋のために本来鰻の旬の冬から
          魚の売れない夏に「滋養の薬」と紹介して応援したのがはじまりとか



     佐渡見えて土用波の穂波を截る          沢木欣一


     土用入りはらわた苦き小魚食ぶ          細見綾子


     土用波小さきテント村灯る            栗田やすし


     数珠で肩撫でて祈祷や土用灸           神尾朴水


     和紙の里土用次郎の太鼓打つ           松永敏枝


     馬の背に撒くや土用の浄め塩           内田陽子


     箱眼鏡土用の海の底のぞく            近藤文子


     竹林へひびく太鼓や土用灸            澤田正子


     土用波裏側見せて崩れたり            吉田明美


     帆船のゆるり向き変ふ土用凪           小田二三枝


     就活の天王山や鰻食ふ              河原地英武


     骨の音鳴らし一気に鰻割く            鈴木みすず


     鰻裂く湖風渡る外流し              野島秀子




          



     国引の注連の太さよ土用東風           吉田鴻司


     古梅酒の封印を解く土用入            石田あき子


     このあたり珊瑚艶なり土用凪           阿波野青畝


     土用太郎ぬるき湯にゐる越後出湯         杉本寛


     土用鰻うの字大きく紺暖簾            蕪木啓子


     一気に書く土用うなぎの墨太く          吉田北舟子



          
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7月 20日

2020-07-19 17:50:13 | Weblog
                      月見草・待宵草・大待宵草

          ツキミソウとマツヨイグサは同じマツヨイグサ属に属する別種の植物です。
          ◇ツキミソウ一年草(二年草)/花は純白(時間が経つとピンクに変化)
          ◇マツヨイグサ多年草/花は黄色(後に赤く変化)


     織娘帰る鉄道沿ひに月見草         沢木欣一


     月見草茎震はせて花ひらく         栗田やすし


     色深し波荒き日の月見草          下里美恵子


     月見草川原の石に陽の温み         小長哲郎


     夜泣きの子あやす声あり月見草       榊原昌子


     月見草大きく月へひらきけり        米元ひとみ


     月見草足裏に痛き川原石          菊山静枝


     潮満つる自決の浜や月見草         澤田正子


     月見草ふるさとの川細りたる        中山ユキ


     月見草白き一輪夕暮るる          今泉久子


     被災地の風にそよげり月見草        渡辺かずゑ




          

          俳句作品に登場する「月見草」や「待宵草」は、必ずしも本当のツキミソウやマツヨイグサを
          詠んでいるかは疑問のところです


     帆はいつも遠きところや月見草       下鉢清子


     帰らざる人を待宵草と待つ         川口咲子


     月見草霧の中より波つぶて         今瀬剛一


     少し酔ひ待宵草に手をふれぬ        菖蒲あや


     汽車煙熱きがかかる月見草         鷹羽狩行


     姫路城待宵草と暮れのこる         鈴鹿野風呂




           

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7月 19日

2020-07-18 14:23:17 | Weblog
                        木槿・底紅・木槿垣・きちはす・花木槿  <季=秋 >

          まだ梅雨も明けず、コロナの終息も見えなくとももう秋の花が咲いていました


     白木槿木のさびしさが花にまで         細見綾子


     花木槿こぼして過ぎし荒神輿           栗田やすし


     歩のゆるき卒寿の母や花木槿          橋本紀子


     南吉の句碑に木槿の影ゆるる          市江律子


     馬宿の木戸に枝張る木槿かな          武藤光晴


     物忘れ多き日暮れや白木槿           藤田映子


     木槿垣だけ残りをり生家址           松本栗主


     白木槿咲きホスピスの友遠し          桜井節子


     慶州や窯場に大き白木槿            本田俊枝


     人影もなき草の道木槿咲く           加藤雅子


     咲き初むる真白き木槿母遠し          近藤めぐみ


     白木槿盛りの寺や綾子の忌           矢野愛乃



          



     白木槿朝日が蘂にすべりこみ           林 翔


     底紅のびつしり咲いて村密か           鈴木蝶次


     木槿咲く年に一度の芝居小屋           加藤泰子


     四五人の讃美歌木槿咲きそめし          藤田湘子


     底紅や一村呑みし湖しづか            鍵和田釉子


     底紅や黙つてあがる母の家            千葉皓史



          
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7月 18日

2020-07-17 13:35:06 | Weblog
                        烏瓜の花


     烏瓜の花よ鵜の巣の三番子         細見綾子


     断崖に烏瓜咲く隠岐の島          山下善久


     一番星見えて咲きそむ烏瓜         国枝洋子


     烏瓜咲いて日食始まれり          磯田なつえ


     咲ききつて夜目にも白し烏瓜        坪野洋子


     烏瓜今宵咲かんとうすみどり        金原峰子


     朝まだき牛舎に烏瓜の花          八尋樹炎


     回り道して見るからすうりの花       石原進子


     雨あとの瀬音や烏瓜の花          飯田蝶子


     山裾の暗みに烏瓜の花           山本法子


     花街の灯りに咲けり烏瓜          ころころ



          



     烏瓜翁のごとく咲きにけり         阿波野青畝


     妖精の編棒烏瓜咲かす          柳原佳世子


     烏瓜の花や失せざる煙のごと       宮津昭彦


     烏瓜咲く学童の肝だめし         太田土男


     咲き足りて夜明けを紡ぐ烏瓜       三橋迪子


     ほのぼのと泡かと咲けり烏瓜       松本たかし


     烏瓜宵の蛾よりも花淡し         水原秋桜子




          
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7月 17日

2020-07-16 14:03:56 | Weblog
                    西瓜・西瓜売り・西瓜畑・西瓜提灯  < 季=秋 >


     西瓜の赤封じこめたるガラス函         沢木欣一


     観音に西瓜供へて合掌す            細見綾子


     塩田の句碑へスイカの蔓またぐ         栗田やすし


     病む母へ小さく切りやる初西瓜         鈴木みすず


     末生りの西瓜転がるほまち畑          武藤光晴


     まづ一つ割つて見せたり西瓜売         関根切子


     大西瓜載せて帰りぬベビーカー         小栁津民子


     故郷の冷たき井戸に西瓜浮く          広瀬多恵子


     朝霧の中より西瓜売りの声           水野雅美


     声荒げ投売り西瓜割って見す          工藤芳江



          



     西瓜喰ふ中年の膝丸出しに           菖蒲あや


     風呂敷に包みて西瓜まぎれなし         飯島正人


     即席の西瓜提灯笑ひけり            阿波野青畝


     まんまろき月のあがりし西瓜番         富安風生


     目隠しの中も眼つむる西瓜割          中原道夫


     ころがしてとまりし形西瓜買ふ         今瀬剛一


     西瓜切るぐるりを子等に囲まれて        羽生 大雪



          
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7月 16日

2020-07-15 15:38:02 | Weblog
                        扇・古扇・扇子・団扇・渋団扇


     上布着て扇子を帯にさして来し          細見綾子


     店先にお香匂へり京扇子             巽恵津子


     北斎展出て広げたり絹扇子            谷口千賀子


     白扇の風を貰ひし砂被り             長江克江


     骨太の扇子せはしき笊碁かな           山下帰一


     岐阜団扇つくる足半窓に吊り           都合ナルミ


     休業の陶工房に渋団扇              武藤光晴


     戦争画観つつ扇子の荒使ひ            伊沢陽子


     病窓に青き島原うちは風             玉井美智子


     鵜篝の火種を熾す渋団扇             角田勝代


     縁日へ三尺帯に団扇差し             豊田紀久子


     蒲焼の煙を叩く破れ団扇             ころころ



          



     ゆるやかに僧のつかへる黒扇子          大野林火


     妓生の扇がくれに澄む目かな           阿波野青畝


     十人に十の扇の動く部屋             稲畑汀子


     うすものの中に扇をつかふ腕           山口誓子


     用ひざる団扇を立つる老の膝           富安風生


     一途さが論に勝ちをり白団扇           岡本眸


     方言はひとことで足り渋団扇           鷹羽狩行


     ひとり身の灯を消し白き夜の団扇         菖蒲あや



          


     
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7月 15日

2020-07-14 13:35:39 | Weblog
                      ビール・ビヤホール・黒ビール・地ビール


     ビール瓶二つかち合ひ遠ざかる          細見綾子


     草臥れし背広は椅子にビヤホール         河原地英武


     キックオフ待たずに干せり生ビール        矢野孝子


     Gパンの僧と酌み合ふ生ビール          藤田岳人


     コンサート終へ地下街の生麦酒          奥山ひろ子


     窓際に黒猫眠るビアホール            田畑 龍


     献杯のビールの苦さクラス会           松岡美千代


     地麦酒や船板塀のレストラン           奥山ひろみ


     七七忌遺影の父にビール注ぐ           市原美幸


     生ビール来て訳もなく乾杯す           服部鏡子



          



     誰もつぎくれざるビールひとり注ぐ        茨木和生


     恋せしひと恋なきひととビール汲む        辻桃子


     君達の頭脳硬直ビヤホール            藤田湘子


     ビール酌み嘘も真も聞きながす          福永みち子


     笑ひは通ずビール肥りの小母さん         林 翔


     ビールくむ抱かるることのなき人と        鈴木真砂女


     登山帽夜も被りてビール飲む           後藤比奈夫



          

          
     
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7月 14日

2020-07-13 13:52:04 | Weblog
                       万緑・萬緑

          万緑の中や吾子の歯生え初むる          中村草田男

          萬緑(万緑)」という語を季語として初めて用い定着させた一句です
          辺り一面が草木の緑に覆われた状態を万緑(ばんりょく)と言う。
          初夏の新緑のみずみずしい緑よりも強い、真夏の深い緑の頃



      万緑の目にしむ伊賀と思ひをり          細井綾子


     万緑や書を借りて出る赤煉瓦           栗田やすし


     万緑の正殿に置く石一つ             国枝隆生


     万緑を描くやときには赤も塗り          櫻井幹郎


     万緑にせり出す寺の大舞台            伊藤範子


     万緑や鳥語それぞれ美しき            武藤光晴


     万緑の底に瀬音と磨崖仏             内田陽子


     万緑や噴煙なびく阿蘇五岳            中野一灯


     万緑にとけこむ寺の読経かな           黒田昌子


     万緑や山より子猿転げ出づ            森田志げを


     美人画展出て万緑に浸りけり           神尾朴水


     万緑に開きし森のエレベーター          利行小波



          



     万緑や動かぬ山の近づき来            永田耕一郎


     万緑の仕上げの雨の五六粒            岡本 眸


     水軍の島万緑に盛りあがり            西村旅翠


     万緑や産声を待つ控室              浅見まき子


     万緑の上にみどりの伊吹山            福田蓼汀


     雲水の声万緑の堂に満つ             加藤耕子



          


     
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7月 13日

2020-07-12 16:21:48 | Weblog
                       夏の海・夏の潮・夏の湖・夏の波 


     夏潮に足浸けしのみ離島去る            栗田やすし


     巫女が舞う緋の色冴えて夏の海           沢木欣一


     夏海を見下ろして木をゆさぶれる          細見綾子


     夏の海見んとて砂丘ひた登る            下里美恵子


     夏潮にジェットスキーの水脈眩し          小栁津民子


     原色のサーフボードや夏の海            太田滋子


     水平線真青や夏の海暮るる             砂川紀子


     夏海や朱の回廊に釣燈籠              市原美幸


     夏の潮白装束の裾濡らす              小田二三枝


     日の入りしより夏潮の匂ひ濃き           中村清子



          



     七十の海女達者かや夏の海             阿波野青畝


     かくまでに父似の男児夏怒濤            宇多喜代子


     駆けてゆくポニーテールや夏の海          今橋眞理子


     夏の浜泳ぎを知らぬ体がじゃま           大高 翔


     点滴のぎらつく生や夏の波             高野豊和


     砂利積みし牛を鞭うつ首夏の浜           林 徹





          
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