踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

女性天皇問題:職業選択や恋愛・結婚の自由もないお姫さまたち

2005年06月07日 | NEWS / TOPICS
女性天皇の実現のために(もっと簡単に言えば愛子天皇実現のために)設置された首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東大総長)で“学識経験者”からの意見聴取が行われたということですが、この問題は一般に考えられているように「この時代に天皇が男性に限定されているなんて男女平等に反する」だとか「外国では女性国王も当たり前で日本だけが遅れている」などといった簡単な問題じゃないです。いろいろ考えてみればすぐわかることだし、下記に引用した皇位継承の5パターンと8人の“学識経験者”の意見などを眺めてもらえばご理解いただけると思う。

ここでは、「いまさら聞けない政治のこと講座(7)女性天皇なしは憲法違反?」に取り上げられている、
・「天皇の夫」を国民が許すか?
・必要最小限が望ましい皇族の数がどんどん増えてしまう可能性
の2つをあげておくだけで十分でしょう。どこの馬の骨ともわからない輩が愛子天皇のダンナになり、その子どもが次の天皇になることをどう思うのか。女性天皇の結婚相手に今度は典範で制限をつけるつもりなのか。日本国籍であるという条件だとしても例えば二世三世のハーフやクォーターだったり(それも右翼が忌み嫌う朝鮮系だとしたら)、あるいは逆に海外の皇室から入り婿したりすること(これはヨーロッパではむしろ普通にみられる)なども考慮しているのか。被差別出身者でもいいのか(私が差別しているという意味ではありません、念のため)。津軽弁や南部弁なまりでもいいのか。今の日本なら宗主国である米国から遣わされるのが自然だろうから、ブッシュ家の孫(いるんだっけ)あたりを今から愛子ちゃんの許嫁にしておけばいいのかもしれない。これで両国の絆は切っても切れないものとなり、世界制覇への運命共同体になれます。

ただここで取り上げたいのはそれとは別の話で、当の本人たちは一体この議論をどう感じているのか(あるいは将来どう感じるのだろうか)ということです。皇室という特別な家系に生まれてしまうと、普通の子のように街で遊び歩いたり、自由に恋愛したりすることもできず、どこかに出かけるときは常に警備がついて、逃げ出すこともできない。家出することも、まして自殺することも許されない。職業選択の自由もないし、結婚相手を探すのも大変な困難がつきまとう(どこの誰が天皇の孫と結婚したいと思うだろうか)。それ以前に、苗字すらない。

そんな基本的人権のない家庭に生まれ育って、それでも女の子の場合は結婚すれば皇室から出て一般家庭の主婦になることも可能だったのに、自分たちが生まれてからいろんな人が勝手に議論して変更してしまいそれも許されなくなる。後出しジャンケンか、キックオフしてからルールが変わるサッカーの試合みたいなものでアンフェアなことこの上ない。一般には愛子ちゃんだけが対象のように思われているけれども、秋篠宮家の二人のお嬢様方もそれより低いとは言え皇位継承権が出てくるわけで、そろそろ思春期に差しかかっている本人たちにとって、気がかりなことでしょう。皇位継承権を放棄する権利というものもないのであれば。

この問題は、突き詰めて考えれば当然天皇制自体の矛盾に突き当たるわけで、「女性天皇はいらない! 天皇制はもっといらない!」と主張する「女性と天皇制研究会」の考えの方がむしろ一定の説得力を持つことになります。だからこそ、宮内庁などでもこの論議をこれまで封印してきたのだと思います。

皇室典範改正・議論の筋道を間違えるな 今月の主張(平成17年2月号)

皇室典範会議:女性天皇の容認など五つの「典型例」を提示

男系男子限定(現行皇室典範)
女性天皇を容認した場合
(1)長子優先…男女を問わず直系・長系を優先し、生まれた順に継承順位を決める
(2)兄弟姉妹間男子優先…長子優先が基本だが、女子の後に男子が生まれた場合は男子を優先する
(3)男系男子優先…現行制度の継承順位を踏襲し、男系男子の継承者がいない場合に女系男子や女子の継承を認める
(4)男子優先…男系、女系にかかわらず男子を優先し、全男子に順位を割り振ったうえで、最後に女子が継承する

「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東大総長)による
学識経験者からの意見聴取結果

女性天皇について慎重論

 大原康男・国学院大教授(宗教行政学)「男系主義の歴史的重みは大きい」
 八木秀次・高崎経済大助教授「過去にも皇統断絶の危機はあったが、皇統が女系に移ることは厳しく排除した」
 両氏は、現在は認められていない皇族の養子制度の導入や、旧皇族の皇籍復帰などにより、男系による皇位継承を維持すべきだと主張

女性天皇を容認

 高橋紘・静岡福祉大教授「象徴天皇にふさわしい皇位継承を考えるべきだ。天皇や皇太子に子供が生まれた瞬間から、男女に関係なく、『将来の天皇はこの方だ』と思える親近感が大事だ」(長子優先案)
 高森明勅・拓殖大客員教授(神道学・日本古代史)「現皇室典範では、皇位継承資格が歴史上、例をみない窮屈なものとなっている。危機を打開するには、女性・女系天皇を認めるべきだ。旧宮家の皇籍復帰により皇族の数を確保するという提案があるが、仮に旧宮家の復帰が実現しても、男子限定を解除しないと早晩、行き詰まる。問題の先延ばしに過ぎない。また、皇位継承順位については直系を優先し、兄弟姉妹間では男子を優先するのがよい。天皇という立場で行う公務は、生理的、肉体的条件から男子の方が望ましいと考える」
 所功・京都産業大教授(日本法制史)「皇位が千数百年以上にわたり男系の皇族により継承されてきた史実は重いが、女系継承も制度的に可能性を開いておく必要がある。可能な限り男系男子皇族による継承の維持に努めながら、同時に女系継承を認め、継承順位は「男子先行」とするのがよい。女性天皇の結婚相手は、皇室に十分なじむ方が望ましい。皇族減を食い止めるため、女性皇族が結婚後も宮家を立て皇族にとどまるようにすべきだ。女性天皇や女性宮家に、旧宮家の男子孫が入り婿することも期待したい。継承順位を決める際、皇室の意向も十分配慮してほしい」

 山折哲雄・国際日本文化研究センター名誉教授(宗教学・思想史)「象徴天皇は、日本の歴史が平安時代と江戸時代に長期にわたって平和な時代を築いた上で、最も重要な役割を果たした。象徴天皇の歴史的背景、性格などが担保されるのであれば、皇位継承者は男系であろうと女系であろうと構わない。皇位継承の場合、血統の原理と(天皇が神格を得る)他国にはない即位後の大(だい)嘗祭(じようさい)によって、天皇にカリスマ性が備わることが特徴だ。カリスマ原理が欠けると象徴天皇の維持はできない。また、象徴家族と近代家族とのあり方の検討が必要となる」

立場を明確にせず

 横田耕一・流通経済大教授「いずれの方策をとっても、天皇制の存続は難しい問題をはらんでいる」
 鈴木正幸・神戸大副学長(日本近代史)「天皇、皇室は社会秩序を理想的に体現し、(変わり行く)社会に適応しながら、国民にあるべき姿を示してきた。現在、皇室の伝統ということがいわれているが、伝統は後の時代に選択されて取り入れられたものだ。今日、(皇位継承に関して)新しい伝統を作ろうということになれば、次世代と価値観を共有できるものであらねばならない。今回の皇室典範改正には、皇位継承に関しては家督相続という側面もある。皇族の方々の意見を何らかの形で配慮する必要がある」