踊る小児科医のblog

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喫煙は「喫煙病」:9学会の「禁煙ガイドライン」完成

2005年09月17日 | 禁煙・防煙
#喫煙は決して「大人の嗜好」や「息抜き」、単なる「習慣」などではなく、「喫煙病」(依存症+喫煙関連疾患)という全身疾患であり、能動喫煙者・受動喫煙者は「積極的禁煙治療を必要とする患者」という認識を基本的な考え方に据えた禁煙ガイドラインが完成しました。私の所属する日本小児科学会も参加していて、会員に配布されるはずですので、熟読して活用したいと思います。

9学会の禁煙ガイドライン 11月公表  喫煙は「喫煙病」

 禁煙治療の手法を、喫煙者や個々の疾患・背景を持つ喫煙者ごとにきめ細かく解説した「禁煙ガイドライン(GL)」がほぼ完成した。今年11月に発刊する日本循環器学会誌(Vol.69,Suppl,IV,2005)に掲載され、正式に公表される。禁煙GLは、禁煙対策に取り組む9学会が合同で策定したもの。日本初の本格的な禁煙GLに位置付けられ、健康被害の防止とたばこを吸わない社会習慣の定着を目的としている。9学会合同研究班の藤原久義・班長(岐阜大大学院医学研究科教授)は本紙取材に対し「医療関係者が幅広く患者に禁煙を指導し、治療することで喫煙率の減少、禁煙率の上昇を目指す。これにより国民の健康がさらに増進されることを期待する」と述べた。

 喫煙は多くの臓器にさまざまな疾患を引き起こすため、禁煙は効果的な疾患予防対策で、保険財政の節約にも寄与する。日本では、医療関係者や医学会の禁煙に対する取り組みは遅れていると指摘されてきた。ここに来てようやく各医学界も本腰を入れた検討に着手し、2003年からは9学会(日本口腔衛生学会、日本口腔外科学会、日本公衆衛生学会、日本呼吸器学会、日本産科婦人科学会、日本循環器学会、日本小児科学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会)が合同の研究班を組織し、禁煙GLの作成に取り組んできた。

 GLは、喫煙が「喫煙病」(依存症+喫煙関連疾患)という全身疾患であり、能動喫煙者・受動喫煙者は「積極的禁煙治療を必要とする患者」という認識を基本的な考え方に据えている。

 GLは、(1)9学会合同で作成された(2)喫煙者一般の禁煙治療と、個々の疾患や背景を持つ喫煙患者の禁煙治療を分けて解説した(3)未成年者の喫煙防止など緊急の課題を取り上げた―を特徴とする。

 喫煙は、成人・未成年の能動喫煙者に循環器、呼吸器、口腔組織だけでなく多くの臓器にさまざまな疾患を引き起こし、受動喫煙においても、これにさらされる乳幼児や、妊婦を介した胎児をはじめとした周囲の非喫煙者にも各種疾患を誘導する。このため、禁煙GLの作成には、専門の異なる各学会の参加が不可欠で、今回、喫煙によるさまざまな疾患に関する9学会が合同でGLを作成した。

■ 病態、背景別に細分化

 GLは、(1)喫煙者一般に対する禁煙治療の方法(第1章、総論)(2)循環器疾患のある人、呼吸器疾患のある人、女性や妊産婦、小児・青少年、歯科・口腔外科疾患のある人、術前・外科疾患のある人、それぞれに対する禁煙治療の仕方(第2章、各論)を、きめ細かく解説している。

 (1)の喫煙者一般に対しては、日常診療などで禁煙を支援する簡易禁煙治療と、禁煙外来などでの集中的禁煙治療の方法を解説。簡易禁煙治療は、ステップ1:Ask(診察の度にすべての喫煙者に喫煙について質問し、喫煙者を系統的に同定する)から、ステップ2:Advise(すべての喫煙者にやめるようにはっきりと、強く、個別的に忠告する)、ステップ3:Assess(禁煙への関心度を評価する)、ステップ4:Assist(患者の禁煙を支援する)、ステップ5:Arrange(フォローアップの診察の予定を決める)まで、5つのステップを踏んで禁煙治療する「5Aアプローチ」を説明している。

 集中的禁煙治療では、喫煙習慣にはニコチン依存が深く関係しているためニコチン代替療法が有効とし、「禁忌でない限り使用が推奨される」としている。コーヒーやアルコールを控えるなど、複数の行動療法を薬物療法と併用する必要性も指摘した。

 (2)の各疾患や各背景を持つそれぞれの喫煙者に対する禁煙治療の仕方については、それぞれの疾患別・背景別に詳細に説明。例えば、循環器疾患では、禁煙治療の実際を急性期、慢性期別に説明するとともに、急性心筋梗塞など急性期にはニコチン代替療法が禁忌であることを指摘している。

■禁煙推進へ政策の実施訴え

 未成年者の喫煙防止など緊急の課題については、未成年者の喫煙防止と禁煙推進のほか、非喫煙者の受動喫煙からの十分な保護、喫煙の有害性の啓発と禁煙治療の普及、禁煙を推進するための社会制度の制定および政策の実施を訴えている。

 日本では、医学界だけでなく全領域において禁煙対策が遅れていたが、この3~4年でようやく、禁煙対策が進んできた。しかし、今でも男性の約半数が喫煙するなど喫煙率はまだ高く、一層の禁煙対策が求められている。

 9学会はこれまで、ニコチン代替療法を含む禁煙治療への保険適用を求める要望書を厚生労働省に6月提出したのをはじめ、全国のJR6社に対し、新幹線・特急列車等の全面禁煙の要望書を2度にわたり送付してきた。今回の禁煙GLについても、普及のための活動を活発化させていく計画だ。