踊る小児科医のblog

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日本脳炎ワクチンの「積極的ではない勧奨」のススメ (2)(院内報より)

2006年11月13日 | こども・小児科
 前号の後に、熊本で幼児が1名日本脳炎を発症しました。脳炎は感染者の100~1000人に1人ですから、周辺では相当数の方が感染していたはずです。

 日本脳炎はヒトからヒトには感染しないので、麻疹のように高い接種率を維持して流行を防ぐのではなく、個人防衛が目的となります。また、青森県から一歩も外に出ないのであれば、感染する可能性はゼロに近いのも事実です。

 昨年、日本脳炎の「積極的な勧奨が中止」の理由となった急性散在性脳脊髄炎(ADEM)という病気は、70―200万回接種に1回程度発生するとされていますが、因果関係の証明は困難で、ワクチンと関係なくマイコプラズマなどの感染症の後に発症する頻度を大きく上回るものではありません。けいれん、運動障害などの症状も回復することが多く、10%程度に後遺症を残すとされていましたが、1例の重症例がみられたため全国的に事実上ストップしています。

 しかし、次のワクチンの見込みが立たない状態で自然感染も危惧され、西日本の一部の自治体では接種を勧めており、小児科学会でも接種再開への要望をだしています。現状でも八戸を含めた全ての自治体で同意書に署名していただければ希望者への接種は可能です。7歳半を過ぎてしまう子はご検討下さい。

(院内報 2006年11月号 追補)

院内版感染症情報と11月の診療予定(院内報より)

2006年11月12日 | こども・小児科
院内版感染症情報

 11月上旬にかけて咳が多くなる風邪とウイルス性胃腸炎が急増中です。おたふくかぜも保育園などで局地的に流行しています。年末にかけて水ぼうそうや溶連菌感染症も増えてくる時期です。インフルエンザの流行はまだですが、年内に予防接種を済ませるようにしましょう。

11月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 11月も臨時休診はありません。急病診療所当番は11月4日(土) 夜、12日(日) 昼、26日(日) 夜の3回で、赤ちゃん教室は25日(土) です。メール予約システムをご利用下さい。         

発行 2006年11月8日 通巻第124号+
(院内報 2006年11月号 追補)

週刊ポストの受動喫煙記事に対する日本禁煙学会の見解

2006年11月10日 | 禁煙・防煙
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週刊ポスト2006年11/17号
<衝撃データを一挙公開>
「受動喫煙は子供の発がん率を低下させる!」
成人男女も「影響なし」
――WHOが封印した7年間の研究成果
駅や病院、学校などの公共スペースのほか、オフィスや新幹線からも次々と喫煙スペースが消え、愛煙家の肩身は狭くなるばかり。「受動喫煙で健康を害されている」というのが嫌煙家たちの決まり文句だが、なんと、受動喫煙が発がん率を低下させるとの調査結果が見つかった。禁煙・分煙ブームに一石を投じる衝撃データである。
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今週発売の週刊ポストに上記のようなとんでもない記事が掲載されていて問題になっているようですが、これについては既にネット上で迅速な対応がなされて、日本禁煙学会から見解が発表されています。(下記に全文を転載)
記者会見も11/16に行われます。

私は記事も元論文も読んでいないのですが、

リヴァイアさん、日々のわざ(作家・川端裕人氏のブログ)
の中で津田敏秀先生が詳しくコメントしていますので参考にしてください。
2006.11.06 受動喫煙は子どもの発ガンリスクを減らす(追記あり)
2006.11.08 週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント1
2006.11.08 週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント2(オッズ比をめぐって)

上記のコメントの中でワイネフさんが、
・元論文は公開されている
・多くの研究の中では自然に起こりうる話(「衝撃データ」などではない)
・WHOでもすでに検証済み
と簡潔にまとめてくれていますが、

津田先生によると、
「結論から言うと、岐阜大学の高岡助教授の読み間違いですね。ご本人の疫学知識はほとんどゼロに近く、よくまあ、これで疫学論文の評価をするなという感じです」
とのこと。

また、この時期にこんなトンデモ記事が出てきたのも、喫煙率低下目標のパブコメで危機感を強めたJT側の巻き返しではないかと推測されています。もちろん証拠はありませんが。

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受動喫煙の害に関する日本禁煙学会の見解
            2006年11月8日

 受動喫煙の健康影響に関する疫学調査は、強力なバックグラウンドノイズとリスクの過少評価をもたらす様々なバイアスに覆い隠されている真の関連を見つけだす作業であり、1件の研究の結果だけで関連の存在が否定されたり肯定されたりする浅薄なものではない。受動喫煙が非喫煙者に肺ガンを起こすという知見は多面的な証拠を総合してみちびきだされた結論である。

 すなわち、(1) 能動喫煙と肺ガンの確固たる関連、(2) 喫煙量には無発ガン閾値はないこと、(3) 主流煙と質的に同じ発ガン物質が副流煙に含まれている、(4) 生体マーカーの測定により発ガン成分が非喫煙者に侵入していることの証明、(5) 環境タバコ煙がDNA損傷をもたらすこと、(6) 動物において発ガン実験が成功している、(7) 疫学的関連の諸条件(成績の一致性・特異性・最高度曝露群での関連の存在・量反応関係など)が満たされていることなどを総合的に評価した証拠の重み解析で受動喫煙と肺ガンが確実な関連を持つと判断されるに至ったのである。

 以上を根拠として、米国EPAは環境タバコ煙(受動喫煙)をヒトに対する発ガン性が証明されたA群発ガン物質(group A carcinogen)と認定した。A群発ガン物質にはベンゼン・アスベスト・ラドンなど10数種類の物質が含まれるが、一般の社会生活レベルの曝露でガンのリスクが明らかに増加することが証明された発ガン物質は環境タバコ煙以外にない。

→ 参考:受動喫煙と肺ガンに関する最近の知見-WHOが間接喫煙のリスクを否定したという誤報を正す-
深川市立総合病院内科 松崎道幸(脱稿1998年2月26日)

20世紀の巨匠たち、ソナタはダリ?

2006年11月09日 | ART / CULTURE
ダリ回顧展が来年の1月4日まで上野の森美術館で開催されています。青森県内ではTVCMはやってないようですが、八戸市美術館で入手した「私はダリ?」のチラシをみて以来、何とかして行けないかと画策中。(…どうするか)

夏休みに青森、浪岡、弘前、八戸と美術館巡りをしたのですが、そこでみてきたシャガール、棟方志功、常田健(ついでに太宰治)らは第二次大戦中から戦後にかけて活動を続けた同時代人なんだなと漠然と感じていました。いわゆる二十世紀の巨匠。

今回のダリも同じくらいかなと思って調べてみたのですが(下表)、こうやって比べてみると二十世紀の巨匠と言っても宮沢賢治までは十九世紀生まれ、ダリや志功、太宰は二十世紀生まれ(明治)で一回りかそれ以上違うということがわかってきました。【】内に1945年8月における年齢を書き出してみましたが、作者と時代背景、生み出した芸術などを理解する一助になるでしょうか。
単純に誰と誰が同じ年代なんだと気がつくだけでも個人的には面白い。
チャップリンとヒトラーは有名ですね(誕生日も4日しか違わない)。

二十世紀後半のプレスリー、ビートルズ以降は、巨匠と呼ばれる傑出した存在が生まれにくく、表現者(アーティスト)にとってオリジナルの創出が難しい時代に入ったのかもしれません。

パブロ・カザルス(1876年12月29日 - 1973年10月22日)【68】
アインシュタイン(1879年3月14日 - 1955年4月18日)【66】
パブロ・ピカソ(1881年10月25日-1973年4月8日)【63】
ストラヴィンスキー(1882年6月5日 - 1971年4月6日)【63】
ルービンシュタイン(1887年1月28日 - 1982年12月20日)【58】
マルク・シャガール(1887年7月7日 - 1985年3月28日)【58】
チャーリー・チャップリン(1889年4月16日 - 1977年12月25日)【56】
アドルフ・ヒトラー(1889年4月20日 - 1945年4月30日)【56】
芥川 龍之介(1892年3月1日 - 1927年7月24日)【53】if
江戸川 乱歩(1894年10月21日 - 1965年7月28日)【50】
宮沢 賢治(1896年8月27日 - 1933年9月21日)【48】if
昭和天皇 裕仁(1901年4月29日 - 1989年1月7日)【44】
棟方 志功(1903年9月5日 - 1975年9月13日)【41】
サルバドール・ダリ(1904年5月11日 - 1989年1月23日)【41】
太宰 治(1909年6月19日 - 1948年6月13日)【36】
常田 健(1910年10月21日 - 2000年4月26日)【34】
岡本 太郎(1911年2月26日 - 1996年1月7日)【34】
手塚 治虫(1928年11月3日 - 1989年2月9日)【16】
エルヴィス・プレスリー(1935年1月8日 - 1977年8月16日)【10】
ジョン・レノン(1940年10月9日 - 1980年12月8日)【4】